Research Abstract |
化石燃料による二酸化炭素の排出を削除して地球温暖化を回避するため,新しいクリーンエネルギーとして水素が注目されているが,水素の利用,応用研究に比べて水素製造技術の開発は著しく遅れている。 酸化チタンなどの半導体粒子を水中に懸濁して光照射し,水分解によって水素を製造する光触媒法は一時,最も注目されたが,量子効率が低いこと,触媒が光溶解すること,太陽光のほとんどを占める可視光が利用できないことなど難点が多く,実用化の目処は全く立っていない。 本年度の研究では硫化カドミウム,硫化亜鉛,硫化鉛,酸化亜鉛,酸化タングステン,セレン化亜鉛などを可視光および赤外線領域の半導体粒子として選び,これらを水に分散させた状態で,メタクリル酸およびアクリル酸のメチル,エチル,ブチルエステル,スチレン,ヒドロキシエチルメタクリレートなどのビニルモノマーの重合、共重合反応を行い,これらのポリマー,コポリマーで半導体粒子を1個1個,ナノメートル単位の厚さで均一にマイクロカプセル化させた。これらの複合化粒子を水に分散させてキセノン光を照射した結果,膜厚が厚い場合にはほとんどの半導体複合粒子で水分解による水素発生は観察されなかったが,膜厚が薄い場合には水素発生量は元の半導体よりも多く,ポリマーの種類あるいはカプセル化状態によって水素発生量に差が認められた。さらに,ポリマーによる被覆状態を複合コアセルベーション法,コロイド滴定法と比較し,水素発生量との関係についても検討した。 本年度の研究で,マイクロカプセル化重合法によって光溶解が起こらず,効率が高く,可視光の利用が可能な,新しい光触媒を合成でき,これによって水素を安価,大量に製造できる見通しが得られた。
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