1999 Fiscal Year Annual Research Report
児童生徒のコンピタンスと問題行動-熊大式コンピタンス尺度の開発と有効性の検討-
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11610127
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
勝俣 暎史 熊本大学, 教育学部, 教授 (60040052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 弘章 熊本大学, 教育学部, 教授 (20040066)
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Keywords | コンピタンス / コンピタンス尺度 / 登校拒否(不登校) / いじめ / 非行 / 自殺的行動 / 感情・態度尺度 / スナイダー希望尺度 |
Research Abstract |
本研究では、(1)児童生徒の諸問題(登校拒否、いじめ、非行、自殺的行動、校内秩序無視など)の理解、(2)教育的支援(教師、親など)、臨床的支援(臨床心理学的、医学的)にも適用できる「コンピタンス尺度」の開発と理論化を意図した。熊本市内小学生(5,6年生)627名(男子310名、女子317名)と中学生(1,2,3年生)701名(男子352名、女子349名)、計1,328名から得られた調査(熊大式コンピタンス尺度、ヒルドレス感情・態度尺度、スナイダー希望尺度)結果を分析した。その結果、以下の事項が明らかにされた。(1)熊大式コンピタンス尺度(児童生徒用、35項目)を構成する5つの因子(認知的コンピタンス、身体的コンピタンス、社会的コンピタンス、生活コンピタンス、総合的コンピタンス)の内的妥当性が確認された(a係数.618-.761) (2)熊大式コンピタンス尺度とヒルドレス感情・態度尺度との関係については、正の相関が認められたが、特に、総合的自己評価コンピタンスとの相関が高かった。(r=.671-.719) (3)熊大式コンピタンス尺度とスナイダー希望尺度のそれぞれの下位因子の間には正の相関が認められた(尤度比検定)が、希望尺度の総得点とコンピタンス因子との関係では、生活コンピタンスと総合的自己評価コンピタンスが希望の水準と特に強い関係が認められた(クラーメルのφ係数=.343,306) (4)熊大式コンピタンス尺度得点と問題行動(登校拒否/不登校、いじめ被害、いじめ加害、自殺念慮)との間には反比例の関係があった。特に、中学生においては、コンピタンス低群の35%に登校拒否(不登校)傾向が、50%に軽度のいじめ被害経験が、40%に自殺(希死)念慮経験が、また、20%に非行経験が認められた。以上の結果から、本研究で開発しようとしている「熊大式コンピタンス尺度」は、信頼性及び妥当性が検証された上、児童生徒の理解、問題行動の早期発見、指導経過の評価(査定)手段として、教師や専門家にも活用できることが統計的に確認されたと言える。引き続いて、登校拒否(不登校)などの児童・生徒の治療経過の査定に適用し、妥当性の検証を行う計画である。
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