1999 Fiscal Year Annual Research Report
家庭・学校・地域間における「文化的習熟度」の研究:コミュニティ心理学的視座
Project/Area Number |
11610136
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
笹尾 敏明 国際基督教大学, 教養学部, 助教授 (10296791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WASILEWSKI JACQUELINE 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (40231071)
山口 勧 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80134427)
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Keywords | 異文化適応 / 多文化社会 / 文化習熟度 |
Research Abstract |
21世紀を迎えるにあたって、世界はもとより、日本国内でも「教育の国際化」は、教育課程のみ直し等において現実化してきた。「国際化」という概念は、従来国際ビジネスにおける国家間のやり取りに焦点が置かれ、語学力をはじめ、異文化適応能力、国際的な状況における問題解決能力や行動に注目されてきた。しかしながら、それらの発言や提言は、異文化体験者・学識者らの直感や経験に基づくものであり、必ずしも研究実証に基づいているものではない。教育現場においては、国際理解教育の一環として外国人教員起用や外国語教育を授業に取り入れる等の形態をとっている。「教育の国際化」におけるこうしたアプローチの根拠としては、日本人生徒・学生らはあるスキル、能力や機会(例:語学力、コミュニカティヴ・コンピタンス、外国人社交術)に欠乏し、それを補うといった前提があり、「教育の国際化」が必要とされている異文化環境下におけるスキルや他の資質との相互関係の全体像を踏まえたアプローチは少ない。さらに、その全体的な「文化的習熟度=多文化社会において一自集団も含めて一機能的に適応する為の信念、態度、価値観、能力、動機、その他種々のライフスキルの総称(笹尾、1995)」を測定する研究も数少ない。平成11年度の研究期間では,特に第一の目的として,上記の「文化習熟度」概念の明確化と暫定的尺度の作成とその予備調査を主に実施した.最初に,文献検索により文献の収集と,展望論文の作成にあたり現在のその初稿の完成が近いが,そのレビューから得た知見としては,今までの異文化適応の諸問題を取り扱うに当たっては,異文化集団と自集団と接点に注目がおかれてきたが,自集団内における適応と他集団との比較による文化の習熟度に関心は払われてこなかった.つまり,異文化・他文化状況におかれた場合,自集団内における対人関係が実際の心理的適応・充実感に影響を与えているのでは考えた.それゆえ,尺度の方向性として「効力感」(efficacy)という概念を導入して暫定的な日本語及び英語による尺度を作成した.その予備調査として日本の中学生127人からデータを集め,分析を行い,信頼性・妥当性を検討した結果,元々の「文化習熟度」という概念より発展させ「文化的効力感」と呼称したほうがより妥当ではないかと考えられる.しかしながら,今回は中学生という限られたサンプルであった為,さらにその枠組みを広げて2年度目には修正した尺度で再度データ収集を英語版,韓国語版,中国語版を作成し,韓国のソウル,アメリカのシカゴ,ロスアンジェルス,ワシントンDC(データ収集の場所は確保してある)を行い最終の尺度作成に臨む.
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