2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610180
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
米田 頼司 和歌山大学, 教育学部, 助教授 (60144101)
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Keywords | 景観 / 景観保全運動 / 生きられる景観 |
Research Abstract |
今年度の研究では、実際の景観保全運動において景観の内実ががどのようなものとして主張されているかについて、インテンシブな事例研究が行われた。対象としたのは、和歌山市・雑賀崎沖の景観保全運動、和歌山市・和歌の浦における景観保全運動、福山市・鞆の浦における景観保全運動であるが、以下のような知見が得られている。 1.保全運動が、保全すべきとする景観は、対抗関係にある集団(行政など)の言説や提示された計画(景観の改変を伴う計画)との関係で言語化され、フレイミングされるが、根底におかれているのは、生きられる景観である。即ち、言語化される前の感応的で体験的な、言わば一次的な景観である。この一次的景観は祝祭的景観でもあり、こうした景観の感応性・祝祭性が、景観保全運動の成立機序の核心部には伏在していると考えられる。 2.これに対して、景観の改変を伴う計画を提示する集団(行政など)は、言語と視覚メディア(写真やフォトモンタージュなど)で景観を固定化し、この固定化された景観を景観評価の出発点におく。この固定化された二次的な景観とそれに基づく景観評価に対して、景観保全を主張する集団からは対抗的な景観提示と景観評価とが主張されるのであるが、対抗性の根源になっているのが、生きられる景観としての感応的・祝祭的景観、即ち一次的景観である。 3.こうして景観問題の基底部には、固定化された二次的景観と生きられる景観としての一次的景観との対抗関係及びこれをめぐる問題状況が布置していることが知られるのであるが、景観問題をその表層においてのみならず深層においても捉えようとする場合に重要となるのが、生きられる景観としての一次的景観を如何にして把握し、理解するのかということである。 4.この生きられる景観のテーマ化は、また、景観問題(景観保全)における当事者性をめぐる問題を顕在化させるものでもある。
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Research Products
(1 results)