2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610216
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Research Institution | Chubu Gakuin University |
Principal Investigator |
文 貞実 中部学院大学, 人間福祉学部, 専任講師 (20301616)
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Keywords | 社会空間 / 野宿者 / ジェンダー |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)「都市」と野宿者との関係性を明らかにすること、(2)その野宿者の空間関係(生産・消費・政治)から山谷の「社会空間」分析を試みるものである。具体的に本研究で取り上げる「社会空間」とは、都市・地域社会を特定の地理的属性や空間概念で捉えるものではない。それは、社会的な営み(公的領域/私的領域)のなかで浮上する社会的葛藤が個々の行為主体の空間的な"葛藤"へ変換される過程、あるいはその個々の行為主体の"抵抗"が都市・地域社会を多元的・多層的な空間として創出する過程、その動的な過程そのものから捉えなおせるものといえる。本研究では、そのような「社会空間」分析の射程から都市の野宿者を対象とした実証的な研究をおこなうことをめざしており、今年度は、野宿者の権力分析への取り組みとして、主にジェンダー論からのアプローチを試みた。山谷周辺の女性野宿者を対象とした実態調査の実施(2000年5-6月の期間、上野公園内、東武線浅草駅・仲町商店街、隅田川テラス公園)。 また、現在進行中の研究としては、実態調査後の追跡調査および女性野宿者のグループホームでのヒアリング作業などがあげられる。これらの研究のなかで得られた知見としては、(1)「貧困の女性化」(女性の労働市場における階層問題)、(2)女性野宿者のアンペイドワークの問題(男性野宿労働者のインフォーマルセクターでの「労働」問題に対して)である。今後、さらにこれらの調査研究を深めることで、都市底辺階層の切断面に位置する女性野宿者をめぐる権力関係の重層性に注目しながら、女性野宿者の"抵抗"戦略から創造される山谷の「社会空間」の分析をおこなう予定である。
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