2000 Fiscal Year Annual Research Report
モニトリアル・システムと子どもの関係に関する組織社会学的研究
Project/Area Number |
11610275
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Research Institution | KUMAMOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
柳 治男 熊本大学, 教育学部, 教授 (00040064)
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Keywords | 官僚制的組織としての学校 / モニトリアル・システム / 義務教育制度 / パッケージとしての学校 / 学校のチェーン化 |
Research Abstract |
モニトリアル・システムは,学校がチェーン・システムとして義務教育制度に組み込まれる際の転機をなした学校であることが明らかとなった.モニトリアル・システムは,学校の中に分業の論理を導入し,教授活動に関わる機能を,企画・立案機能と生徒に教える作業機能とに分割した.この学校内部における分業は,マクドナルド一号店においてレストラン経営が,企画・立案機能とハンバーガー処理機能とに分化したことと同一現象である.その後マクドナルドではこの店鋪内分業が拡大し,経営本部とチェーン化した店鋪からなる巨大なチェーン・システムが完成した.義務教育制度は,このようにストレートにチェーン化したのではなかった.モニトリアル・システム批判と共に登場した他の種類の学校,多様な教育イデオロギーの登場などにより紆余曲折を繰り返しながら,19世紀末に国家を頂点とする義務教育制度として,チェーン・システムの完成を迎えた. チェーン化において決定的役割を果たすのが,効率的経営の為のサービスの標準化であり,それは具体的にはサービスの限定化,パッケージ化として現れる.この論理は,学校では学級制として組み込まれることとなった.モニトリアル・システムにおいて,従来の個別指導を中心とする教授法に代わり,同一能力で生徒をクラスにグルーピングし,一括して教育する方式が登場した.義務教育制度の具体化過程で,標準的な教育を全学校で実現する為に,政府はスタンダードを制定し,同一内容のカリキュラムによる教育を命じた.これに呼応して学校現場では,同一年令,各年進級の標準化された学級制を定着させ,学級によるパッケージ化した教授方式が一般化することとなった. 伝統的学校が保持してきた教師と生徒の人格的関係は,モニトリアル・システムの出現により消失し,効率化し,没人格化したシステムによる子どもへの教育サービスが出現したのである.
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