1999 Fiscal Year Annual Research Report
教育裁判における裁判官の教育観の諸相と裁判所の判断へのその影響
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11610290
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
村田 徹也 愛知大学, 文学部, 教授 (90271379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 勇 愛知大学, 文学部, 助教授 (60221157)
安井 俊夫 愛知大学, 経済学部, 教授 (50267879)
佐々木 享 愛知大学, 短期大学部, 教授 (10083601)
太田 明 愛知大学, 法学部, 助教授 (30261001)
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Keywords | 教育観 / 教科書裁判 / 学校裁量 / 教育認識 / 体罰裁判 |
Research Abstract |
〔教育情況や社会意識の変化にともなう教育裁判の判決内容の変化〕 (1)体罰裁判 七〇年代から八〇年代にかけては、校内暴力や非行の多発という状況の下で、学校に「厳しい指導」を求める声が強く、裁判所の判断もその影響をうけて、体罰を行った教師の意図に理解を示すものが多い。九〇年代に入ると、八〇年代の管理教育への反省から、現場教師や教育研究者の間から体罰の反教育性を指摘する声が強く出されるようになり、また、子どもの人権についての意識が父母の間に強まり、それらを受けて、体罰の反教育性及び子どもの人権侵害の両面から体罰を否定する判例が多くなっている。 (2)教科書裁判 教科書裁判では、教科書検定審査の際に文部大臣が付する「修正意見」が、文部大臣の裁量権の範囲を逸脱しているか否かが重要な争点になる。文部大臣の裁量権逸脱の有無は、文部大臣の範囲をどのようにとらえるかによって判断が異なってくる。その、文部大臣の裁量権の範囲のとらえ方が、三次にわたる教科書裁判の過程で次第に変化してきている。初期は、文部大臣の修正意見に相応の根拠があれば合法であるとする「相応の根拠」論が多かったが、次第に、文部大臣の意見に重大な過誤がなければ合法であるとする「看過し難い過誤」論に移り、第三次訴訟の上告審では、二人の裁判官から、文部大臣の修正意見が合法とされるのは、原稿記述が教科書として不適切な場合に限られるべきであるとする意見が出されている。全体して、文部大臣の裁量権の範囲をよりきびしく見る方向に変化してきていると言える。このような変化は、学校における授業の内容、その中での教科書の位置付け、中学・高校生の社会認識能力などについての裁判官の認識の変化によるものと思われる。
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Research Products
(1 results)