1999 Fiscal Year Annual Research Report
近世、富山売薬を中心にした抜け荷取引とその運輸の研究
Project/Area Number |
11610339
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
深井 甚三 富山大学, 教育学部, 教授 (00125642)
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Keywords | 富山藩 / 富山売薬 / 抜荷 / 海運史 |
Research Abstract |
本年度の研究は富山県・石川県の地元調査と両県外の他県調査に重点を置いて、関係史料の発掘に力を入れるとともに、収集した関係史料の解読作業と関係文献の再検討に務めた。この結果、本研究での一重点課題となっていた長崎口での富山売薬商による唐薬種入手の活動について、これまでまったく知られていなかった、その重要な背景となる富山藩の活動を確認できる史料を見いだすことができた。具体的には天保期に富山藩が長崎で売却される輸入品の売買に乗り出したことであり、またこの時に本藩もこれに関係していたことが史料からうかがえ、この時期の富山藩・加賀藩が藩財政打開に向けて必死の努力をしていたこと、しかもこのことが、富山売薬による薩摩藩での抜け荷入手にかかわる活動をもたらしたこと、また加賀藩の輪島での抜け荷取引黙認や、銭屋五兵衛の活動容認をもたらしたことがわかった。 県外調査では、とりわけ対馬での宗家文書調査により、大きな成果があげられた。本研究の重要課題の一つに対馬からの薬種入手の問題があり、この点でも糸口となる関係史料を見いだすことができた。すなわち、これまで対馬の研究者にも富山売薬が対馬に入り込むことはなかったとされていたのが、今回の調査により一時的ではあるが、富山売薬商がこの対馬で売薬活動を行えたことを確認できた。これは大変に大きな成果といえる。富山売薬が対馬で一時的とはいえ活動したことは、彼らが朝鮮より対馬へ入る薬種の入手についてもそれなりの対応をみせていたことを確実に予測させるからである。 なお、この他、薩摩口、大坂その他での薬種入手の富山売薬の活動と、入手薬種の運送についても資料収集とその検討を進めたことも付け加えたい。
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