2002 Fiscal Year Annual Research Report
縄文時代後・晩期における居住システムの転換と分節化社会の発達過程の研究
Project/Area Number |
11610412
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
武藤 康弘 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (80200244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 青樹 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (30284053)
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Keywords | 縄文時代 / 住居跡 / 集落遺跡 / 低湿地遺跡 / 墓地遺跡 / 分節化社会 / 掘立柱建物 / トチノミ |
Research Abstract |
研究代表者の武藤は、平成14年9月に堅果類食習の比較研究のために、米国オレゴン州のポートランド州立大学とオレゴン大学を訪問し、プラトー先住民の根茎食に関する資料を収集した。また、10月から12月にかけて、奈良県川上村においてトチノミ食の民俗調査を行なった。この地域のトチノミの加工はアクヌキに加熱処理を伴わない非加熱のアクヌキ法に特徴がある。現地調査の結果、アクヌキ法における加熱工程の機能は、処理時間の調整にすぎないことが判明した。さらに、アクヌキにおける木灰の有効性を確認した。また、非加熱アクヌキ法の歴史遡及的な分析を行い、縄文時代の水場遺構の機能については、灰とトチノミを一緒に水漬けするような方法がとられていた可能性を、西日本に多いドングリの低湿地立地型の貯蔵穴については、アクヌキの効率化のために灰を混ぜ合わせて貯蔵している可能性についても検討した。現地調査の成果と非加熱アクヌキ法の機能的側面と歴史遡及的研究の成果は、『奈良女子大学文学部研究年報』に発表した他、平成15年3月21日に国立歴史民俗博物館にて研究発表を行なった。 研究分担者の小林青樹は、西日本を中心に縄文時代の貯蔵穴出土の炭化物について分析し、武藤が提示した低湿地型貯蔵穴に置ける木灰の意識的な投入について、考古学資料から検証した。 最後に、縄文時代後・晩期における近年の較正年代の研究の進展には、住居、集落研究も大きな影響をうけている。平成15年3月22日に国立歴史民俗博物館において発表された最新の研究成果によると、弥生時代の開始は紀兀前1000年頃まで遡ることになり、縄文時代晩期が、ほぼ弥生時代の開始期から前期と同一時期になる。従来、縄文時代晩期の掘立柱建物と弥生時代のものは全く別系統のものと考えられていたが、大きな時間の隔たりは無くなってしまう。今後は、このような年代研究の最新成果も加えながら、縄文時代晩期という時代を根本的に捉えなおす必要にせまられているといえる。
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Research Products
(1 results)