2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610464
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
和田 英信 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (20231037)
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Keywords | 欧陽脩 / 詩話 / 古文 / 士大夫 / 宋代文学 / 宋詩 |
Research Abstract |
本年度、本研究は、次のような内容の調査・考察を行った。 1、北宋期における詩話成立の意味、南宋期における詩話変容の背景に関する考察 2、詩話に用いられる文体「古文」について 概要は以下のとおり 1、詩話は、北宋期に成立した士大夫層の緊密なネットワークの中で、彼らに共有される話題交換の場、あるいは士人間の情報の交流を担う新しいメディアとしての機能を担った。また注目すべき点として、その表現形式(叙述形式)があげられる。それは、作者(語り手)である欧陽脩が、聞き手を前にしての語り(物語行為)を再現するものであり、従来の、物語内容を再現・伝達する形式(史伝の形式)とは一線を画すものであった。この新しい叙述形式もまた、士人間の情報の交流を担うメディアとしての詩話の機能に対応したものであったと考える。 また、詩話のこのような社会的機能に対応した、著述あるいは出版(編集)形式のスタイルの詩話総集として、南宋初に『〓渓漁隠叢話』が成立した。 そして当該書に見出される蘇軾・黄庭堅の文学に対する注目が、唐詩と宋詩の対比に関する士人層の関心を喚起し、詩のあり方を歴史的にとらえる見方、ひいては理論的な性格を、詩話に付与することとなった。 2、欧陽脩による「詩話」成立の契機として「古文」という文体の選択があった。上記1に見られる詩話の叙述形式の特色は、音数律や対偶構成といった形式的規制から自由な「古文」の文体によって可能になった。
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