1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610539
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
生田 眞人 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (50140067)
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Keywords | 三月前期 / 検閲 / ウィーン / メッテルニヒ / 歴史劇 / グリルパルツァー / 絶対主義 / 革命 |
Research Abstract |
私の専門とするドイツ・オーストリアの演劇研究では、ライムントやネストロイを代表とする民衆劇と、グリルパルツァーに代表される歴史劇に対しての検閲の特徴を、今年度は考察した。現実の社会制度や政治体制に関わりのない夢幻的・浪漫的民衆劇を得意とするライムントのような作家は検閲の憂き目にあうことはなかったが、諧謔の中にも社会的、政治的批判を込める民衆劇を本領としたネストロイなどはしばしば検閲の抑圧を受けている。演劇台本を公表することが少ないか、或いは皆無であった民衆劇では、演劇作品が舞台に上がって始めて、検閲は上演差し止めなどの措置に表われ、禁固刑に服した劇作家の作品の解釈、さらには作家の手紙や談話録に表現されている検閲への批判などを参考に「三月前期」の社会と文化を理解するよう務めた。それに対して、純文学としての演劇といえるグリルパルツァーの歴史劇は、上演された芝居と印刷に付された台本という両面で、検閲に対処しなければならなかった。従来、オーストリアの歴史や国家体制を描く歴史劇は、概括的に検閲を受けること多かったとされてきたが、当時の劇作家たちの作品を詳細に比較検討していった過程で、検閲の頻度や過酷さの程度は劇作家毎に非常に異なっていることが判明した。例えば「三月前期」の劇作家であるH.J.コリン(Collin、1771-1811)、J.L.ピュルカ-(Pyrker、1769-1844)、或いはC.ピヒラー(Pichler、1772-1847)などは、グリルパルツァー同様、オトカー王やルードルフ一世を描写する歴史劇や叙事詩を発表するものの、検閲を受けず、対してグリルパルツァ-は繰り返し検閲を受けていた。この違いが生じる由来を私は「神話」と「歴史」、絶対主義への「信奉」と「批判もしくは懐疑」といった二項対立に求め、検閲と文学の相克を検討した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 生田真人: "マリーア・テレージアとヨーゼフ二世の時代における歴史と文化の研究"京都産業大学・国際言語科学研究所紀要. 1. 1-107 (1999)
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[Publications] 生田真人: "Grillparzers Lebensanschauung in der Dichtung"アジア・ゲルマニスト会議「Schwellenuberschreitungen」. (2000)