2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610553
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
林 廣子 お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (00134859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新美 成二 国際医療福祉大学, 保健学部, 教授 (00010273)
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Keywords | 環境空間 / 歌声 / 自己知覚 / 音響学 |
Research Abstract |
声楽の場合は、自らの身体が楽器であるが故に、その演奏にあたって他の楽器よりも主観的感覚に頼るところが大きいと考えられるが、あらゆる環境において効率のよい発声をするためには、こうした感覚は不可欠なものであり、その声に変化をもたらしている一因であると考えられる。そこで、歌唱者が歌唱する際、その環境からうける影響について調べるために、音響の異なる環境において発声された声にどのような違いがみられるか、聴取実験による調査を行った。 まず、声楽演奏経験の豊富な4人の歌唱者に、音響の異なる3つの環境において、2種類の歌唱を行ってもらうという歌唱実験を行った。3つの環境とは(1)残響が全く無い(2)適度に残響がある(3)残響が多すぎる、というように残響の量に差をつけ、他の条件は同一にした。2種の歌唱とは、第1曲はレガート、第2曲はスタッカートという、音楽的特徴の異なる楽曲を選定した。 上記の歌唱実験の録音を用いて比較評価による聴取実験を行った。評価基準は、第1曲では「声の響きの豊かさ」第2曲では「音程の正確さ」とし、どちらがより強く感じられたかを7段階で評価してもらった。 その結果、概して残響の少ない環境ほど、より良い歌唱ができるという評価が出た。特にスタッカートによる跳躍進行が主要素である第2曲では、残響が歌唱者の感覚に大きな影響を及ぼしていることがわかった。 しかしながら、歌唱者によっては(2)の環境での歌唱が最も良い評価を得ているものもあり、個人差が認められる。今後は、歌唱実験に用いる曲の選択に工夫を加えること、歌唱者自身からも歌いやすさなどのアンケートをとる、聴取実験の際の評価基準をより客観的なものにするなど、実験方法に改善を加え、さらに詳しい謁査を行う必要があると考えられる。
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