2000 Fiscal Year Annual Research Report
幻想に彩られた西洋への巡礼・郷愁に彩られた日本への回帰
Project/Area Number |
11610573
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 克也 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (30171135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 陽子 成城大学, 経済学部, 教授 (70165687)
平川 祐弘 福岡女学院大学, 人文学部, 教授 (80012368)
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Keywords | 日本回帰 / 西洋への憧憬 / クレオール / ラフカディオ・ハーン / 永井何風 / 岡倉天心 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度からの研究を継続しつつ、まずその成果を単行本『異国への憧憬と祖国への回帰』(平川祐弘編、明治書院)として公刊した。これは、ラフカディオ・ハーン、岡倉天心、谷崎潤一郎、永井荷風、小林秀雄、遠藤周作、カズオ・イシグロ、アンジェラ・カーター等にみる異国憧憬と祖国回帰の運動を跡づけるとともに、これらを「幻想に彩られた西洋への巡礼・郷愁に彩られた日本への回帰」という視点から、より普遍性のある現象として捉えようとしたものである。 また、近代日本文学の作家たちにみる西洋への憧憬が、いわゆる異郷への憧憬と重なりあうものを持つことに注目し、日本国内の「異郷」、特に南島への憧憬について、林芙美子らの作品について共同研究を行った。 さらに、日本への「異国憧憬」という面での代表的な文学を生み出したラフカディオ・ハーンについて、その「クレオール性」に着目した研究を行うため、平成13年2月2日、フランス海外県マルティニック島のアンティーユ・グイヤンヌ大学で開かれた「エグゾートの軌跡」国際シンポジウムに参加し、研究発表を行った。これは、西インド諸島のクレオール文化に注目し、そこでの見聞を優れた作品に表現したハーンと、その後来日して日本文化を「発見」したハーンとの間に、著しい平行現象があると考えたためであった。このシンポジウムへの参加を通じて、西インド諸島と日本という相互交渉の希薄な地域の間に、「クレオール」という視点を持ち込むことで、数々の興味深い類似点が浮上したのは大変に意義のある発見であったと言える。
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