2001 Fiscal Year Annual Research Report
社会保障の役割変化と世帯の多様化の及ぼす生活リスクに関する統計的研究
Project/Area Number |
11630029
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Research Institution | TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE |
Principal Investigator |
寺崎 康博 東京理科大学, 経営学部, 教授 (90136622)
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Keywords | 社会保障 / コーホート / 成人同居 / 世帯構造 / 生活リスク / 所得構造 |
Research Abstract |
本研究の目的は生活の単位である世帯の多様化という視点から生活リスクに備えるべき社会保障の機能を再検討することであり,本年度は最終とりまとめを行ったところ以下の研究成果を得た。 1 国際比較から見た日本の世帯構造の特徴は同居世帯が多い点であるが,高齢者のみならず,未婚人の80%以上が親等と同居しており,三世代世帯に関する統計からは予測できない現象となっている。 2 夫婦を除く成人の同居者の個人所得をみると,およそ全人口の20%前後が同居によって生活が保障されていると推計される。 3 10年後には三世代世帯等の非核家族世帯は現在の構成比から2%の減少,20年後にはほぼ今日の欧米とほぼ同様の世帯構造となり,非核家族世帯はさらに1%の減少が予測され,同居によって維持されている家族による生活保障機能が一層低下する。 4 社会保障負担については,今後の制度改革によって大きな変更が見込まれるが,1990年代には獲得所得に対する負担率の増加は総体として0.5%前後であったが,コーホート別に見ると,大部分は2%前後の負担増となっている。制度改革がない場合は今後の10年もさらに同様の規模の負担増が見込まれる。 5 同居世帯の減少は低所得層を顕在化させ,所得格差が増大する。非核家族世帯がそれぞれ独立したと仮定すると,ジニ係数で測定した場合0.3前後の悪化が予測される。 6 コーホート別に見ると,所得格差は10年ごとにジニ係数で測定しておよそ0.5前後拡大するので,個人が印象として持つ格差の拡大感は数値以上のものがある。 7 税や社会保障の負担増が見込まれ,かつ所得格差の増大が予測される状況では制度改革に対する不満を募らせる可能性が大きい。
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Research Products
(2 results)