1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11640431
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 隆 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教授 (70167443)
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Keywords | PSC / サンドウイッチ構造 / ライダー / 核生成 |
Research Abstract |
スバールバル諸島ニーオルスン(79°N,12°W)でのライダー観測では、多くのPSC事象を観測した。特に、成層圏温度が露点近くまで低下した際に頻繁に見られたPSC鉛直構造の"サンドウィッチ構造"は特徴的である。成層圏の温度が露点温度付近にまで低下した際、しばしば偏光解消度がほとんどゼロで、532nmの後方散乱係数が5-8の層が現れる。また、この層の上端、下端には偏光解消度の極大の層が付随している。すなわち、球形(液滴)の粒子のPSC層を非球形(固体)のPSCの層が挟む(sandwich)ように見える。ただしこれら偏光解消度の層では後方散乱の増加は見られない。 サンドウイッチ構造では後方散乱と偏光解消度の関係が高さ方向に逆相関となっている。この、後方散乱と偏光解消度の逆相関関係はサンドウイッチ構造が現れた際のみならず、ほとんどのPSC事象で見られた。すなわち、後方散乱と偏光解消度が同時に増加する例はほとんど無かった。 微物理モデルを用いたサンドウィッチ構造生成過程の考察は、PSCの微物理過程に関して多くの示唆を与えている。上記液滴粒子と非常に数の少ない固体粒子の外部混合がサンドウィッチ構造のみならず、ライダー観測された後方散乱係数と偏光解消度の関係を再現できることを示した。観測の良好な再現(偏光解消度数%)は限られた個数の固体粒子数(10^<-3>から10^<-2>個/cc)でのみ可能であった。固体粒子が存在可能な温度まで、せいぜい数日のオーダーで、PSCを含む空気塊の温度が低下している。この時間スケールと固定粒子の個数から固体PSC粒子の核生成速度の最低値を見積もることができる。結果は、固体粒子の個数は液体粒子の個数に比べて非常に少ないが、現在唱えられている値に比べて5桁以上早い生成速度でなければならないことが数値計算より明らかとなった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 林政彦他: "Size and number concentration of liquid PSCs : balloon-borne measurements at Ny-Alesund,Norway in winter of 1994/1995"Journal of Meteorological Society of Japan. Vol.76. 549-560 (1998)
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[Publications] 石井昌憲他: "Arctic haze and clouds observed by lidar during four winter seasons of 1993-1997 at Eureka,Canada"Atmospheric Environment. Vol.33. 2459-2470 (1999)
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[Publications] 原圭一郎他: "Fractionation of Inorganic Nitrates in Winter Arctic Troposhpere-coarse Aerosol Particles containing Nitrates"Journal of Geophysical Research. vol.104. 23671-23679 (1999)
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[Publications] 柴田隆他: "On the lidar observed sandwich structure of polar stratospheric clouds,I,implications for the mixing state of the PSC particles"Journal of Geophysical Research. vol.104. 21603-21611 (1999)
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[Publications] 柴田隆: "On the lidar observed sandwich structure of polar stratospheric clouds,II,numerical simulations of externally mixed PSC particles"Journal of Geophysical Research. vol.1 104. 21613-21619 (1999)