1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11650668
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
永井 規男 関西大学, 工学部, 教授 (00067604)
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Keywords | 長崎 / 中国 / 貿易 / 近世 / 倉庫 / 新地蔵 / 居留地 |
Research Abstract |
近世における中国貿易における唯一の窓口であった長崎には、中国からの交易品を収納する倉庫群としての新地蔵がつくられていた。それは、中国人居留地である唐人屋敷(唐館)の近くの海岸前に築造された人工島で、オランダ人居留地である出島と一対をなしていた。新地蔵は純粋な港湾倉庫施設群として構成されていたが、明治以降は中国人居留地となり、さらに今日の中華街へと至っている。 本年度の研究は、この新地蔵の建築的構成とその歴史的変遷や性格を解明するため、(1)新地蔵を描いた絵画や絵図資料や文献資料の収集と、(2)比較のため新地蔵に來船した唐船の出港地である中国江南地方の港湾施設の視察調査および関係歴史資料の収集の二つを軸にしてすすめた。 (1)については未知の絵図資料若干と新地蔵を撮影した明治期の写真数点を入手し、近代から遡行するかたちでその都市上あるいは建築上の解析を進めている。明治期まで残されたと思われる新地蔵時代の倉庫写真からは、絵図資料からは窺えない立面構成の解明が期待できそうである。 (2)については、主として中国福建省の海岸主要都市を見学した。残念ながらこれらの港湾施設はほとんど一新されており、近世の状況を窺うことは困難であったが、若干の古地図や資料を入手したので、それらによってある程度の比較は可能であろう。 今後、新地蔵の建築的構造を解明する上では、唐人屋敷との関連あるいは長崎の商業活動のなかでの位置づけなども新たな課題として出てきている。今後はそれらを含めて、新地蔵の構造と性格の解明を行なう予定である。
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