Research Abstract |
クロムは耐食性,耐磨耗性,耐食性という観点からきわめて機能性に優れた金属であるが,発がん物質として,その環境負荷性はきわめて高く,世界中でその使用が限定される可能性が高い金属である。そこで,本研究ではクロムめっきの代替材料として,すず-ニッケル系に着目した。これまでの合金電析による非平衡相NiSn皮膜の生成ではなく,熱的により安定な各種平衡相生成を目的とし,すず,ニッケルの単層積層膜を加熱により合金化させるプロセスを検討した。初年度(平成11年度)においては,銅基板上にすず,ニッケルの順にそれぞれテトラフルオロホウ酸浴,ワット浴からそれぞれ単層膜を積層させ加熱して合金化を試みたが,金属間化合物相は得られなかった。本年度は鉄基板上にすず,ニッケル,あるいはその積層順序を逆転させた単相積層膜を炉中において長時間加熱した。その結果,すず,ニッケルの順に積層させた場合は,ニッケルの電析時にあらかじめ析出したすずが溶解してしまい,その後の熱過程において十分な金属間化合物皮膜が得られなかったが,一方ニッケル,すずの順に析相させた場合は,それぞれ10μmから30μm程度の単層膜が生成し,その後の熱過程において金属間化合物が生成した。すずの融点以下における加熱では,一週間程度の加熱で,NiSnの非平衡相が出現するようになり,さらに10日間程度加熱する事により,Ni_3Snなどの平衡相が得られることがわかった。さらに加熱温度をすずの融点以上に上げたり,レーザー照射することによりこれらの合金化プロセスに要する時間が短縮することがわかった。これらの結果は本報告書末尾にあげられている研究論文のみでなく,"すず-ニッケル合金膜の製造方法"として二つの特許出願につながっている。(特願2000-323631,特願2000-377157筆頭発明人兼松秀行出願人勝山正嗣平成12年10月24日,同年11月24日出願)
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