2000 Fiscal Year Annual Research Report
水田の環境保全と水稲の超多収を実現させるための戦略
Project/Area Number |
11660015
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鯨 幸夫 金沢大学, 教育学部, 教授 (20126577)
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Keywords | 環境保全型農業 / コシヒカリ / 根系 / 水稲 / 多収 / 根の生理活性 / F_1品種 / ルビジウム吸収量 |
Research Abstract |
多収穫の実績を残している長野県伊那市で栽培されるコシヒカリの生育、光合成速度、蒸散速度、根の土壌中階層分布および出穂期における根の生理活性を測定した。対照として、石川県で25年間にわたり連続した同一施肥管理(無窒素、化学肥料のみ施用、豚ぷん堆肥の施用)条件下で栽培されたコシヒカリを調査した。また、品種間差異や低コスト環境保全型農業の実践例として、LP肥料を施用して乾田不耕起直播栽培を行ったF1品種(MH2003,MH2005)の特性を調査した。対照区と比較すると、多収コシヒカリの根量は多く、出穂期における光合成速度や蒸散速度は富山県の慣行栽培区の測定値の約2倍であった。出穂期における根系からのRb吸収量を指標として表示した根の生理的活力は、多収コシヒカリが対照区より有意に高かった。多収穫の背景には、根の生理的活性の高さと高い光合成速度および蒸散が関与していることが明らかとなった。乾田不耕起直播したF1品種の根系はコシヒカリより有意に高い生理活性をもつことも明かになった。多収穫と根の生理活性との間には密接な関係があると考えられた。低水温の農業用水を利用している伊那コシヒカリと富山県入善町コシヒカリを比較して、水温が水稲の生育および収量に及ぼす影響を検討した。入善の水稲の場合、水口部の水稲根生育量は水尻部より有意に小さく、低水温の影響が顕著に表われていた。伊那では、水口部と水尻部における根系生育の差は小さく、収穫期では水口の根系生育が大きい結果も示された。伊那で利用している三峯川水系の用水にはSiやCaが多く含まれていることから、生育に対しては水温よりも用水から供給される天然のSi量の影響を考える必要があると考えられた。長期間にわたる堆肥連用圃場で栽培したコシヒカリの根系生育は大きかった。表題に示されたテーマを達成させるためには、有機物の施用とLP肥料の併用およびSi供給量を考えるべきである。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Yukio KUJIRA,Nakajima,H.Magaya and Y.Maeda: "Varietal differences of nice root systems grown in the compacted hard Soil Condition."The 6th ISRR Symposium, Nagoya. (2001)
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[Publications] Yukio KuJIRA and T. Oritani: "Root Systems and Physiological root activities of rice cv, Koshihikari grown in Ina City."The 6th ISRR Symposium, Wagoya. (2001)
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[Publications] 鯨幸夫 他: "水稲の三要素試験区における根系分布"北陸作物学会報. 37. (2002)
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[Publications] 鯨幸夫 他: "水稲F_1品種の乾田不耕起直播栽培"日本作物学会紀事. 70(別2). (2001)
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[Publications] 鯨幸夫,折谷隆志 他: "多収穫コシヒカリの根系生育と根の生理活性"日本作物学会紀事. 70(別2). (2001)
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[Publications] 鯨幸夫 他: "栽培管理の違いが、コシヒカリの収量,根系生育および根からのRb吸収に及ぼす影響"日本作物学会紀事. 70(別2). (2001)