2001 Fiscal Year Annual Research Report
水田の環境保全と水稲の超多収を実現させるための戦略
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11660015
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鯨 幸夫 金沢大学, 教育学部, 教授 (20126577)
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Keywords | コシヒカリ / 根重 / サイトカイニン / 収量 / 出液速度 / 水稲 / 根の活力 / ルビジウム吸収量 |
Research Abstract |
1)今日の水稲栽培では、慣行的にN, P, Kの三大肥料要素が施用されている。富山県農業試験場の三要素試験圃場(継続20年目)において、コシヒカリの根系生育、根の生理活性および収量構成要素を調査した。無K施用区および無P施用区の収量は三要素施用区と大きな差はなく、根重の階層分布および出液速度にも大きな差は認められなかった。水稲栽培におけるPまたはKの施用は再考する必要があることが示唆された。2)長野県伊那市および富山県入善町の多収穫水田でコシヒカリの栽培試験を実施した。Rb吸収量を指標とした根の活力は、株間5cm下よりも株直下20cmで高かった。しかし、登熟中期の根の活力は、必ずしも多収穫水田では高いとは言えなかった。伊那市で利用している三峯川水系の農業用水のSi含有量は出穂期および登熟中期でそれぞれ154ppmおよび111ppmと高い値を示した。伊那コシヒカリの多収性(850kg/10a)は、用水に由来するSiの吸収量の多さと土壌の高い空隙率(20%以上)か関係し、入善(609kg/10a)の場合は土壌の透水性に由来する酸素供給量を媒介とした高い根の活力が関与していると考えられた。3)有機資材の連用効果を、石川県根上町の圃場で検討した。今年度は穂肥の量を調整して収量が同じ水準になるような試験を実施した。無N区の収量は428kgであったが、化学肥料区、稲ワラ区および豚ぷん堆肥区の反収は、それぞれ、587kg、615kgおよび644kgでほぼ同一水準であった。出穂期における豚ぷん堆肥区の根重は他の試験区より有意に少なかった。株間5cm下および株直下20cmにおけるRb吸収量は、無N区で有意に多かったが、他の3試験区間ではRb吸収量に有意な差は認められなかったが、分げつ期の出液速度は有機資材連用区で大きいことから有機資材の連用は根の活力に影響していると推測される。出液中のサイトカイニン(t-ZR)含有量は、ELIZA法を用いて現在定量中である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 鯨幸夫, 奥野志津枝, 宮川修, 新谷美紀, 橋本和幸, 前田裕二郎, 三上敦子: "連続した栽培管理がコシヒカリの根菜生育、土壌の肥沃度および収量構成要素に及ぼす影響"日本作物学会記事. 71(別1). (2002)
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[Publications] 鯨, 橋本, 新谷, 奥野, 前田, 三上, 折谷, 宮川: "多収コシヒカリの要因解析-長野県伊那市および富山県入善町の場合-"日本作物学会記事. 71(別1). (2002)
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[Publications] 鯨, 三上, 前田, 宮川, 橋本, 新谷, 奥野, 折谷: "水稲根の生理活性と地上部生育および収量構成要素との相互関連性"日本作物学会記事. 71(別2). (2002)
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[Publications] 鯨, 橋本, 東, 新谷, 前田, 奥野, 三上, 沢田, 山田: "水稲栽培でリンまたはカリの施用は必要か? 20年間の水稲三要素継続試験から"日本作物学会記事. 71(別2). (2002)
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[Publications] 鯨, 葭田, 橋本: "水稲出液中のサイトカイニン含有量について"日本作物学会記事. 71(別2). (2002)