Research Abstract |
落葉広葉樹二次林伐採後の雑草木の再生について,光合成系の発達と再生における栄養繁殖状態に注目して研究を実施した. 1.光合成系の発達 伐採後の地拵えとして,刈り払いをおこない,その後に機械地床処理をした区画(試験区A)と処理をしなかった区画(試験区B)を設けた.試験区A,Bの出現種のうちで高い被度を示したのは,アズマザサ,クマイチゴ,更新対象のコナラであった.その他では,タラノキなど低木数種とオカトラノオなど草本数種がやや高めの被度を示した.伐採後1年目では.全出現種の被度合計は全成長期を通して明らかに試験区Aで小さく,とくに前期から中期にかけて小さかった.全出現種の高さ別被度分布は,試験区Bでは中期には既に最高被度階が第1階から第2階に移動.すなわち上方への被度の増大が急速に進んだのに対し,試験区Aでは後期に至っても起こらなかった.雑草木の被度に注目すると,試験区A,Bとも草本種と木本種がかなりの部分を占めたが,試験区Bでは後期になって草本種の被度が減少したのに対し,試験区Aでは引き続き増大過程にあった.伐採後2年目以降では,全出現種の被度合計は少なくとも2年目までは試験区Aで20%以上低く,上方への被度増大は試験区Aで遅れた.上位階では,試験区A,Bとも2年目でクマイチゴが上位階で高い被度を示し,3年目には木本種と交代する傾向が見られた.しかし,上位階における木本種の被度増大は,試験区Aで小さかった.中下位階では,試験区A,Bとも草本種の被度減少とアズマザサの被度増大が並行して起こるが,試験区Bではこれが2年目であったのに対し,試験区Aでは3年目であった.したがって,機械地床処理による雑草木の再生抑制効果は,以下のように要約される.(1)初め一時的に低植被率状態にする.(2)アズマザサの繁茂を遅らせる.(3)低木種の繁茂を遅らせる. 2.栄養繁殖型 森林伐採後に発生する低木種実生で起こる栄養繁殖について,地下器官の掘り出しをおこなって詳細に調べた.調査の結果,4つの繁殖型すなわち短茎型,株型,横走根型,地下茎型に分類できた.短茎型は1本の茎のみをもつもので,サンショウの一部で見られた.株型は地際付近から複数の茎が発生するもので,ムラサキシキブ,サンショウの一部などで見られた.横走根型は,地表直下を横走する根から複数の茎が発生するもので,クサギ,ヌルデ,タラノキなどで見られた.地下系型は,地下茎から多くのサッカーが発生するもので,ヤマブキ,クマイチゴで見られた.高木種の更新をめざす森林造成において,速やかに空間を占有し高い現存量密度を示す雑草木種が最も脅威であり,再生制御の対象として注意を払わなければならない.この意味で制御の主たる対象は,まず地下茎型であり次いで横走根型である.これら雑草木種に絞って,生活史上の様々な特性や再生生理反応について研究をさらに進める必要がある.
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