Research Abstract |
アミロイドβ蛋白質(Aβ: amyloid β protein)の代謝を明らかにすることは,アルツハイマー病(AD : Alzheimer's disease)の病因究明において重要な課題である。我々はこれまでに,抗AβC末断端抗体,抗AβN末断端抗体,抗Aβ17-24抗体(4G8)などによりAD患者および非痴呆者の脳,心臓,肺,肝,腎,膵,小腸の各組織が標識されることを見出し,脳以外の組織にAβ代謝産物が存在する可能性を示唆した。しかし,4G8による免疫ブロットでは,AD患者と非痴呆者の心,肝,腎に陽性バンドは認められなかった。本年度研究では,さらに下記のことが明らかになった。 1.AβC末断端部分を含むペプチドの各組織における存在を確認するために,抗AβC末断端抗体を用いた免疫ブロットによりAD患者および非痴呆者の生体サンプル(脳,心臓,肺,肝臓,腎臓,膵臓,小腸)を検索したが、脳以外の組織で陽性バンドは認められなかった。 2.予備実験において,Aβの1回静注だけではラット脳に変化はみられなかった。そこで,15匹のラットを5匹ずつの3群に分け,各々に(1)Aβ1-40(50μg),(2)Aβ1-42(50μg),(3)生理食塩水(0.2ml)を1回/日,30日間静注後,脳のパラフィン切片を作成し,免疫組織化学的検討を行ったが、脳実質に陽性反応は認められなかった。 脳以外の各組織で認められた免疫組織学的Aβ陽性反応は,4G8や今回の抗AβC末断端抗体を用いた生化学的手法では確認されなかったことから,cross reactionの可能性が考えられる。また,血液中Aβの脳への移行は,少なくともラット脳において30日間では起こらなかった。しかし,動物種,老齢動物,もっと長い暴露時間によっては起こる可能性は残っている。
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