2000 Fiscal Year Annual Research Report
口腔領域に常在的に発現する低分子量熱ショック蛋白質の存在意義の解析
Project/Area Number |
11671801
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
脇坂 聡 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教授 (40158598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田畑 純 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (20243248)
永瀬 佳孝 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (50252698)
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Keywords | 低分子量熱ショック蛋白質 / 歯根膜 / 歯胚 / エナメル芽細胞 / 象牙芽細胞 / マラッセの残存上皮 / 神経損傷 |
Research Abstract |
熱ショック蛋白質(heat shock protein;HSP)は種を越えて非常によく保存された蛋白質である。これらの誘導は熱ショックのみならず生命の存続に危険な状態である低酸素状態、重金属、アルコールへの曝露やウイルスの感染などによっても起きることから、ストレス蛋白質と呼ばれている。HSPはその分子量からHSP90、HSP70、HSP60ファミリーと分子量2.6万付近の低分子量HSPファミリーの4つのファミリーに大別される。これらHSPは、非ストレス下においても発現していることや、バクテリアなどではHSPの欠失が致命的に働くことなどから、正常な細胞内において蛋白質の成熟や輸送に関与している重要な働きをしていると言われている。これらHSPのうち低分子量HSPについて歯胚と成獣切歯歯根膜および中枢神経での分布を検索した。その結果HSP27はエナメル芽細胞、象牙芽細胞に認められ、エナメル質や象牙質の形成に伴う細胞の形態維持に関与することが示唆された。また、HSP27は歯髄や歯根膜の樹状細胞、血管内皮細胞さらに歯根膜の上皮成分であるマラッセの残存上皮の細胞にも認められた。このうちマラッセの残存上皮では歯根に近接する上皮細胞はHSP27陰性であるが、歯根から離れた細胞がHSP27陽性を示すことが明らかになった。さらに歯根膜機械受容器であるルフィニー神経終末の軸索にも見いだされた。歯根膜支配神経損傷後においてはHSP27は長く突起を伸ばした細胞に認められ、この細胞がどのような細胞であるかについて現在検索中である。また、歯根膜神経の機械受容器の細胞体が存在する三叉神経中脳路核ニューロンは正常な状態でもHSP27を発現しているが、神経損傷後はその染色性が増加することが分かった。このことよりHSP27は神経損傷というストレス下で発現が増大し、ニューロンの生存に何らかの機能を果たしているものと考えられる。HSP27は成獣運動ニューロンにも常在的に認められるが、発生的に検索したところ、運動ニューロンの形成と同時にHSP27が発現することが分かった。
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[Publications] Y.Atsumi et al.: "Immunohistochemical detection of heme oxygenase-2 in the periodontal Ruffini ending of the rat incisor"Brain Research. 855. 287-291 (2000)
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[Publications] H.Ohshima et al.: "Transient expression of heat shock protein (Hsp) 25 in the dental pulp and enamel organ during odontogenesis in the rat incisor,"Archives of Histology and Cytology. 63. 381-395 (2000)
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[Publications] S.Wakisaka et al.: "Morphological and cytochemical characteristics of periodontal Ruffini endings under normal and regeneration processes"Achives of Histology and Cytology. 63. 91-113 (2000)