2002 Fiscal Year Annual Research Report
気候温暖化による中部日本・高山域の少雪化と森林生態系の動態変化の解析
Project/Area Number |
11680535
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
丸田 恵美子 東邦大学, 理学部, 助教授 (90229609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶 幹男 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (00152645)
及川 武久 筑波大学, 生物科学系, 教授 (70011682)
上村 保麿 東邦大学, 理学部, 教授 (20120256)
末田 達彦 愛媛大学, 農学部, 教授 (90109314)
池田 武文 京都府立大学, 農学部, 助教授 (50183158)
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Keywords | 気候温暖化 / 森林限界 / 亜高山帯針葉樹林 / 水分ストレス / キャビラーション / エンボリズム / 強光阻害 / Abies mariesii |
Research Abstract |
日本の中部山岳域において、日本海側から太平洋側にかけて特に冬季の環境傾度が顕著にみられ、その影響を受けて多様な森林生態系が発達している。特に日本海側の山岳域では冬季の多雪に守れた森林が成立しており、森林限界は亜高山帯常緑針葉樹からなり、高山域では低木のハイマツ(Pinus pumila)群落が発達していることが特徴である。本研究では、これらの環境傾度に沿って、森林限界付近で樹木が受ける環境ストレスがどのように変化をするかを明らかにし、その結果に基づいて気候温暖化がこれらの森林植生に与える影響を予測することを試みた。環境ストレスの影響としては、太平洋側の冬季に乾燥が継続する山域では、葉や枝の乾燥による枯損が卓越していた。最も冬季の乾燥が著しい富士山では森林限界の最先端には常緑針葉樹は生存できず、乾燥に強い落葉針葉樹のカラマツのみから形成されていた。カラマツに守られるように、森林限界移行帯内において常緑針葉樹が生育しているが、その中でもAbies属は目立った枯損は見られないものの、Pinus属のヒメコマツでは、冬季に葉表面のクチクラが損傷して乾燥枯死するために、移行帯の中でさえ生存がむずかしいことがわかった。おそらくPinus属では、針葉がたっているために風の影響を受けやすく、クチクラの損傷の程度も大きいためと考えられる。そのためハイマツも積雪の保護がないと高山域で生存することはむずかしいと考えられる。
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