2001 Fiscal Year Annual Research Report
味覚嗜好性行動の発現における脳幹アセチルコリン神経系の関与
Project/Area Number |
11680787
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
志村 剛 大阪大学, 人間科学研究科, 助教授 (80150332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 隆 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60028793)
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Keywords | 味覚嗜好性 / アセチルコリン / 脚橋被蓋核 / 中脳腹側被蓋野 / 結合腕傍核 / ベンゾジアゼピン / ラット / 嫌悪性味刺激 |
Research Abstract |
1.これまでに、脳幹部アセチルコリン細胞起始核の一つである脚橋被蓋核、及びこの部位と密接な線維連絡をもつ腹側淡蒼球の両部位が、嗜好性味溶液の摂取に促進的に働くことを、ラットを対象とした破壊行動実験により明らかにした。本年度は、脚橋被蓋核のおもな出力部位の一つであり、かつ、ドーパミン細胞の主要な起始核として知られる中脳腹側被蓋野が味溶液摂取行動に及ぼす影響について再吟味し、腹側被蓋野は味覚嗜好性の認知的側面には関与せず、むしろ嗜好性に基づく味溶液の過剰摂取、すなわち動機づけの側面に関与することを示す実験成績を公刊した。この知見は、脚橋被蓋核の出力が腹側被蓋野の動機づけ機能を調節することを示唆するもので、アセチルコリン細胞の重要性が再認識された。さらに、アセチルコリンの作動薬や阻害剤を脚橋被蓋核に微量注入して味溶液摂取に及ぼす影響を調べているが、明確な結果が得られるまでには、やや時日を要する。 2.嗜好性味溶液の過剰摂取に関与する上記の脳部位に、どのような形で味覚入力が影響するのかについては、これまでほとんど不明であった。トレーサー注入による線維連絡の解析を継続して実施した結果、味覚第2次中継核である結合腕傍核と上記脳幹部位との関連性が明らかになったので、結合腕傍核自体が嗜好性あるいは嫌悪性味刺激の情報処理にどのように関与しているかを、電気生理学的実験により調べた。通常、動物が嫌悪する酸味刺激をさらに忌避するように条件づけ処置を行うと、酸味刺激に対する結合腕傍核ニューロン応答はより嫌悪性の強い応答パターンに変化することを見出し、その成績を公刊した。結合腕傍核は、味覚嗜好性を修飾する物質として知られるベンゾジアゼピンの作用部位として有力視されており、結合腕傍核の出力が脳幹部の上記部位に影響していることが示唆されたことから、味覚刺激と摂取行動を媒介する神経回路の一端が明らかになった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 志村 剛: "側坐核と動機づけ行動"大阪大学大学院人間科学研究科紀要. 27. 219-240 (2001)
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[Publications] Shimura, T., Kamada, Y., Yamamoto, T.: "Ventral tegmental lesions reduce overconsumption of normally preferred taste fluid in rats"Behavioural Brain Research. (in press). (2002)
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[Publications] Shimura, T., Tokita, K., Yamamoto, T.: "Parabrachial unit activities after the acquisition of conditioned taste aversion to a non-preferred HCl solution in rats"Chemical Senses. 27. 153-158 (2002)