2000 Fiscal Year Annual Research Report
先住民による海洋資源利用と管理:漁業権と管理をめぐる人類学的研究
Project/Area Number |
11691053
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
岸上 伸啓 国立民族学博物館, 先端民族学研究部, 助教授 (60214772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 稔 小樽商科大学, 言語センター, 教授 (00142787)
松本 博之 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70116979)
秋道 智彌 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 教授 (60113429)
竹川 大介 北九州大学, 文学部, 助教授 (10285455)
岩崎 まさみ 北海学園大学, 人文学部, 助教授 (50305893)
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Keywords | 先住民 / 海洋資源 / 資源管理 / 資源利用 / 環太平洋 / 極北地域 / 資源論 / 環境 |
Research Abstract |
本年度の調査成果の要約は次の通りである。(1)報告された事例を比較検討した結果、北方民と南方民の資源利用と管理方法には大きな違いがあることが判明した。北方地域では、人々が利用している海洋資源の種類が相対的に少なく、海洋資源ほとんどは彼らの食料となっている。一方、南方地域では、人々はホンコンなど市場で売れる商品となる海洋資源を開発している。海洋資源に多様性があるため、特定の商品となる資源が枯渇すると、他の地域へ移動し、同一もしくは別種の資源開発を行う。(2)現在、アメリカ、カナダ、ロシアの北方地域では、国家や州が関与する資源管理が実施されている。一方、オーストラリアなどを例外とすれば、大半の南方民には国家の規制があまり働かず、資源管理は実践されていない。北方と南方の海洋資源利用をめぐる相違は、利用しうる資源の生物的な多様性の幅が大きいかどうか、人口密度、資本主義経済や国家とのかかわり方の違いに起因していると考えられる。(3)先住民の資源利用に関しては、先住民と国家、先住民とその他の国民、先住民同士、先住民と外国人などの間で紛争や葛藤が発生している。また、資源管理のやり方についても、伝統的な民俗知識と科学的知識の利用の間に対立関係が見られる。(4)残留性有機物質による環境汚染のために、食料となる海洋資源の安全性が問題になりつつある。これまでの資源管理は、数量の持続的な維持に主眼が置かれてきたが、安全性の管理が重要な課題となっている。(5)海洋資源の利用と管理は、地球規模の諸要因と関連しており、一地域や一国家を単位とする資源管理では、不十分である。(6)資源問題の解決は各国家の政治的な要因によって左右されため、エコ・ポリテックスとでもよべるような政治動態が存在しており、新たな研究対象となっている。
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[Publications] Kishigami,Nobuhiro: "Contemporary Inuit Food Sharing and Hunter Support program of Nunavik, Canada"Wenzel,G.et al eds,The Social Economy of Sharing : Resource Allocation and Modern Hunter-Gatherers (Senri Ethnological Studies,National Museum of Ethnology,Osaka,Japan). 53号. 171-192 (2000)
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[Publications] 岸上伸啓: "北米北方地域における先住民による諸資源の交易について"国立民族学博物館研究報告. 25・3. 293-354 (2001)
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[Publications] 岸上伸啓: "カナダ・イヌイット社会における海洋資源の利用と管理"人文論究. 70号. 29-52 (2001)
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[Publications] 秋道智彌: "海と人類"尾本恵一 ほか 編 海のアジア:海のパラダイム(岩波書店). 1巻. 3-30 (2000)
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[Publications] 秋道智彌: "島嶼世界と漁労文化:入漁となわばりをめぐる試論"島嶼研究. 1号. 1-14 (2000)
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[Publications] 赤嶺淳: "ダイナマイト漁に関する一視点:タカサゴ塩干魚の生産と流通をめぐって"地域漁業研究. 40・2. 81-100 (2000)
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[Publications] 赤嶺淳: "熱帯産ナマコ資源利用の多様化:フロンティア空間における特殊海産物利用の一事例"国立民族学博物館研究報告. 25・1. 59-112 (2000)
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[Publications] Akamine,Jun: "Holothurian Exploitation in the Philippines : Continuities and Discontinuities"Tropics. 10・4(印刷中).
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[Publications] 松本博之: "風と身体:トレス海峡諸島の「ひと」と「自然」"地理学報. 34号. 35-77 (1999)
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[Publications] 松本博之: "トレス海峡諸島の地域社会"熊谷圭知,西川大二郎 編「第三世界を描く地誌:ローカルからグローバルへ」(古今書院). 109-130 (2000)
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[Publications] 岩崎まさみ 他: "アイヌ民族のクジラ利用文化"鯨研通信. 406号. 10-18 (2000)
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[Publications] Iwasaki,Masami: "Whaling Culture in Ayukawa"Sponsel,L.ed.Endangered Peoples of Southeast and East Asia. (London : Greenwood Press). 69-89 (2000)
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[Publications] 大島稔: "アイヌとカムチャツカ先住民の漁労文化に見る共通性"アジア遊学. 17号. 74-87 (2000)
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[Publications] 大島稔: "カムチャツカ先住民によるサケ資源の利用と管理"民博通信. 91号. 16-25 (2001)
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[Publications] G.W.Wenzel,G.Holvelsrud-Broda and N.Kishigami: "The Social Economy of Sharing : Resource Allocation and Modern Hunter-Gatherers.(Senri Ethnological Studies.No.53.)"国立民族学博物館. 219 (2000)