ラオスにおける蚊媒介性感染症の疫学的調査研究

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11691217
• Research Institution: UNIVERSITY OF THE KYUKYUS
• Principal Investigator: 宮城 一郎 琉球大学, 医学部, 教授 (50039921)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 當間 孝子 琉球大学, 医学部, 助手 (10145526) ; 宇座 美代子 琉球大学, 医学部, 教授 (00253956) ; 岡澤 孝雄 金沢大学, 留学生センター, 教授 (70145192)
• Keywords: ラオス / カムアン県 / マラリア / デング / 媒介蚊 / 分類 / 蚊相 / 疫学

Research Abstract

本年度は5次調査(平成13年4月25〜5月9日)をラオス北部のウドンサイ県の2村で住民のマラリア感染状況や媒介蚊の生態学的調査を実施した。また、これまでの調査研究(平成11から13年度)の総まとめ・最終セミナー(平成13年8月4日〜平成13年8月12日)をビエンチャンで開催した。このセミナーは我々の調査団(文部省科学研究)、ラオス保健省、日本国際協力事業団の共催で内外のマラリア防圧の関係者が多数参加して開催された。第5次調査結果の概要は下記の通りである。Khouan村(人口900)では517人の血液検査の結果,陽性者は全くいなかったが、Vangnhane村(319)では391人中51人はマラリア陽性者であった。Khouan村は盆地の水田地帯の農村で、比較的経済的に裕福だったが、Vangnhane村は谷あいに位置する山岳民族で経済的に恵まれていなかった。蚊相の調査では51種類の蚊が採集された。媒介蚊の調査では両村で人囮法、動物囮法で912個体のハマダラカを採集したが、同定の結果、人囮、動物囮いずれの方法でも11種(4グループ含む)で、Anopheles minimusグループが最も多かった。これらのグループは形態的にはAn.minimus AだけでなくCも含まれていた。蚊体内のマラリア原虫を検出するためにAn.minimus AおよびC160,An.maculates 44,An.aconitus21個体を解剖し、顕微鏡下で調べたが、すべての個体が陰性だった。しかし、Vangnhaneで採集したAn.minimusグループ302個体(1プール10個体)をELISA Dip-Stick testを行った結果3プール(3-30個体)に原虫が検出された。これらの結果からVangnhane村ではAn.minimusグループが周辺の渓流に発生しており、マラリアの重要な媒介であることが明らかになった。前年度調査した南部地区のカムアン県ではAn. dirusが森林地帯で、An.minimusグループが山間地域て重要なマラリア媒介蚊であり、北部のマラリア媒介蚊とは異なっていた。

Research Products

• [Publications] TSUZUKI Ataru: "Possibility of false-positive detection for sporozoites in mosquito (Diptera : Culicidae) by nested polymerase chain reaction using Plasmodium yoelii genomic DNA"Southeast Asian J.Trop.Med.Public Health. 32・3. 275-281 (2001)
• [Publications] TAKAKURA Minoru: "The relationship between anthropometric indicatiors of nutritional status and malaria infection among youths in Khammouane Province, Lao PDR"Southeast Asian J.Trop.Med.Public Health. 32・2. 262-267 (2001)
• [Publications] MTYAGI Ichiro: "Tripteroides (Rachionotomyia) ponmeki (Diptera : Culicidae) : A new species from Khammouane Province, Lao PDR"Medical Entomology and Zoology. 52. 269-277 (2001)
• [Publications] 岡澤孝雄: "ラオス国・カムアン県における蚊相と未記録種、Tripteroides (Rachionotomyia)sp.の生態"日本衛生動物学雑誌. 52. 132 (2001)
• [Publications] 津田良夫: "ラオス中部(ThakhekおよびNongbok)におけるデング熱媒介蚊の発生源と幼虫の天敵相"日本衛生動物学雑誌. 52. 132 (2001)
• [Publications] 當間孝子: "ラオス国カムアン県のマラリア流行地におけるハマダラカの調査(1999)"日本衛生動物学雑誌. 52. 132 (2001)
• [Publications] 宇座美代子: "ラオス国カムアン県におけるマラリア予防に関する住民の知識と保健行動に関する調査"日本衛生動物学雑誌. 52. 133 (2001)
• [Publications] 津田良夫: "デング熱媒介蚊の発生と人為的要因"日本衛生動物学雑誌. 52. 89 (2001)
• [Publications] 小林潤: "ラオス南部におけるマラリア感染に対する蚊帳使用の効果について"日本寄生虫学会雑誌. 50. 117 (2001)
• [Publications] 當眞 弘: "Dipstick法によるラオスにおける最近のマラリア流行状況の調査"日本寄生虫学会雑誌. 50. 126 (2001)
• [Publications] 當間孝子: "ラオス国カムアン県のマラリア流行地におけるハマダラカの調査-人吸血嗜好性と吸血活動時間について-"日本衛生動物学雑誌. 53. (2002)
• [Publications] 宮城一郎: "ELISA法によるラオス産ハマダラカのマラリア原虫の検出"日本衛生動物学雑誌. 53. (2002)
• [Publications] 宮城一郎: "蚊の不思議"東海大学出版会. 153 (2002)