ニホンザルに見られる季節性機序の解明

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11833008
• Research Institution: KYOTO UNIVERSITY
• Principal Investigator: 浜田 穣 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (40172978)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 吉田 高志 国立感染症研究所, 筑波霊長類センター, 主任研究官 (60142147) ; 鈴木 樹里 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (10175408) ; 渡辺 邦夫 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60158623)
• Keywords: 季節性 / 季節繁殖 / 体脂肪 / ニホンザル(Macaca fuscata fuscata) / 思春期 / 体組成 / レプチン / IGF-1

Research Abstract

本計画最終年度にあたり12月に研究成果をもちより、ニホンザルの季節性機序について総合的に検討を加えた。季節性には栄養と生殖が関連し、さらにそれらの間にも関連'性がある。この複雑な関係を、ニホンザルに近縁で無季節性のカニクイザルの成績と対照検討した。まず体脂肪率をDexaで計測し、体重値、BMI、皮厚値などの間接的脂肪量指標の効用を検討した。カニクイザル、オトナメスの体重は4kgが標準、4.5kg以上が肥満であり、ニホンザルではメス8kg、オス12kgが標準である。両種で成長期には脂肪率が10%を超す個体は認められず、カニクイザルでは脂肪率は6-7才以降に増加をはじめ、11才以降に急増する。一方、ニホンザルではオトナ期に脂肪率上昇は見られない。後者の季節性が著しい肥満を抑制しているようだ。時系列解析法により、思春期体重変化をトレンド(大局的な成長)、季節変動、および残差(定常)の成分に分解し、季節変動の詳細を検討した。体重季節性は栄養状態が主であり、生殖状態は出産等の大規模な変化しか季節変動には結びつかない。季節変動パターンの性差として、削痩期間がメスで長い傾向が認められ、雌雄間で異なる採食パターンが生態学的要因だと推測された。メスでは、夏から秋への体重増加(脂肪蓄積)が生殖過程へいたる確率に影響すると示唆された。それは栄養状態の信号(血中グルコースが候補)が脳内分泌系を刺激し、性腺刺激へ結びつくことと合致する。ニホンザル体重季節変動への脂肪の関与は4割程度で、生殖関連器官(例、精巣や性皮)の発達・縮小の寄与は小さい。体重季節変動の肥満終了期にレプチン濃度が高まる個体が認められた。IGF-1はトレンド成分を制御し、性成熟1年前に分泌増大が始まる。野生個体の生殖生理的変化を追跡するために、糞便性ステロイド濃度定量法が実用化された。季節性と加齢変化の関係は今後の課題である。

Research Products

• [Publications] Miyamoto S: "Monitoring the Reproductive Status of Female Gorillas(Gorilla gorilla gorilla) by Measuring the Steroid Hormones in Fecal Samples"PRIMATES. 42(4). 291-307 (2001)
• [Publications] Yoshida T: "Monitoring the Reproductive Status of Japanese Monkeys (Macaca fuscata) by Measurement of the Steroid Hormones in Fecal Samples"PRIMATES. 42(4). 367-373 (2001)
• [Publications] Lian JH: "Immunolocalization of proliferating cell nuclear antigen (PCNA) in cynomolgus monkey (Macaca fusciculairs) testes during postnatal development"J.Med.Primatol. 30. 107-111 (2001)
• [Publications] Yang C: "Middle Age Onset of Obesity in Laboratory-reared Female Cynomolgus Monkeys"J.Growth. (in press). (2002)
• [Publications] Yang C: "Relationship between body weight and hematological and serum biochemical parameters in female cynomolgus monkeys (Macaca fascicularis)"Exp.Anim. (in press). (2002)
• [Publications] 濱田 穣: "ニホンザルの体脂肪とその季節変化"霊長類研究. 17(2). 146 (2001)
• [Publications] HAMADA Y: "Longitudinal Analysis of Length Growth in the Chimpanzee (Pantroglodytes)"Amer.J.Phys.Anthropol. 17(2)(in press). (2002)
• [Publications] 濱田 穣: "成長パターンの系統比較と現代人の成長"霊長類研究. 17(2). 111 (2001)
• [Publications] 濱田 穣: "ニホンザルの体脂肪とその季節変化"霊長類研究. 17(2). 146 (2001)
• [Publications] 濱田 穣: "スラウェシマカク雑種個体群の研究、霊長類研究"霊長類研究. 17(2). 123 (2001)
• [Publications] 菊池泰弘: "チンパンジー、マカク類における:廃骨断面形状の定量分析"霊長類研究. 17(2). 129 (2001)
• [Publications] 広瀬良宏: "カニクイザルでのGnRHアゴニストとhMG投与による卵胞発育誘起とその内分泌学的解析"霊長類研究. 17(2). 163 (2001)
• [Publications] Ohkura S., Tsukamura, H., Maeda K.-I.: "Handbook of Experimental Animals : The Laboratory Rat"Academic Press, London. 401-418 (2000)
• [Publications] 濱田 穣: "ニホンザルの自然誌-その生態的多様性と保全"東海大学出版会 (in press). (2002)
• [Publications] 濱田 穣: "ヒトの歩行と老化"テラペイア杜 (in press). (2002)