2012 Fiscal Year Annual Research Report
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11J06630
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松井 亨 独立行政法人理化学研究所, 量子系分子科学研究チーム, 特別研究員(PD)
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Keywords | 5位修飾ウリジン / 密度汎関数法 / 水銀イオン / ミスマッチ塩基対 / 酸化還元電位 |
Research Abstract |
当初は、本年度においてピレン等の光機能を持つ官能基を核酸塩基に金属イオンを加えた場合の影響を計算により明らかにすることを目的としていた。これにより、金属イオンの効果の有無を検証することができる。ピレンを含むウラシル[Py-U]の酸解離定数は10.5と算出され、イミノ基から脱プロトン化する可能性はないことが予想され、通常の水銀イオンのみが配位することが予想される。 実際にピレンを修飾したウラシルを水銀イオンでブリッジした構造[PyU-Hg-PyU]において、時間依存密度汎関数法を用いてUV-Visスペクトルを描いた結果、350nm周辺にピレン由来のピークが見られ、300nm周辺に水銀とウラシルの相互作用に関係するピークが得られた。一方で、ピレンと水銀に関係するピークは見られず、水銀イオンのブリッジで光機能を新しく持つような現象は見られなかった。 しかしながら、このような光機能の制御には錯体の酸化還元電位を正確に求める必要がある。我々はこの問題を解決すべきとして、算出法のスキーム開発に取り組んだ。通常の密度汎関数法と溶媒和理論の組み合わせでは、定性的にすら算出できなかった。これに対して我々はカウンターイオンを擬似的に置いて、溶媒和エネルギーを補正し、標準水素電極ポテンシャルも計算手法に依存するような計算手法を開発した。これにより、Ru(Bpy)3などの光機能を有する錯体の酸化還元電位の算出も可能となることを示し、また核酸塩基の酸化還元電位においても、標準水素電極ポテンシャルを計算手法によって調整することで実験値を再現することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光機能を有するPy-Uという核酸塩基を水銀イオンによってUと結合可能であることを示唆する結果が得られており、当初の予定通りの結果が得られたと考えられる。ただ、実験との連携が取れていないことが問題として残っている。実際に蛍光が出るのかという検証も必要となってくる。その一方で、酸化還元電位の正確な算出法については、人工核酸だけでなく金属錯体など様々な方面への応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、光によって磁性が誘起される現象を検討したい。具体的には、水銀イオンとチミンミスマッチを含む系に注目してスピン状態の変化を追跡する予定である。その際に、スピン-軌道相互作用の検討が必要であることとそれに伴って、莫大な計算量が予想される。その解決策として、このような効果にも対応可能で、超並列計算に優位なNTChemを利用することを検討している。
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