2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J07131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 彬 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子電磁気学 / ポジトロニウム / サブテラヘルツ光学 |
Research Abstract |
今年度は研究計画の第一段階であった,203GHzにおけるボジトロニウム超微細構造間直接遷移の観測を予定通り行うことができた.これは世界初の快挙である.これはフィードバックによるジャイロトロンの長期安定化と,Fabry-Perot cavityの開発により達成した.今年度前半の研究は主に上記の観測のための統計量をためたり系統誤差の研究をすることに費やされた.私の目的はポジトロニウム超微細構造を初めて直接的に観測することであるが,そのためには超微細構造間遷移を複数の周波数点で観測することでわかる遷移曲線を測定する必要がある.上記の光学系では一点での遷移観測は達成できたが,複数の周波数点では不可能なので本年度後半は新しい光学系の開発を行った.まずジャイロトロンは固定周波数で発振する光学デバイスであるため,内部共振器を径の異なる複数の共振器に交換できるようにした.本年度中に遷移曲線を描くのに必要な周波数の共振器試験はほぼ完了した.次に遷移曲線の裾では遷移確率が本年度観測した203GHzよりも小さいため,さらにハイパワーかつ安定な光学系を組む必要があった.現在のFabry-Perotcavtyではミラーが冷却不能なため溶解する問題と,反射波がジャイロトロンへ戻り発振を不安定化するという2つの問題がある.そこで回折格子を用いたring-cavityを開発した.回折格子の溝間隔を1.310mmにすることで60度の入社ビームに対し15度の-1次回折が生じる.これに対し平面ミラーと凹面ミラーをうまく配置することで頂角30度の二等辺三角形の光路をもつring-cavityを構成した.このring-cavityはミラーが全て冷却可能なのはもちろんのこと,反射ビームがジャイロトロンの方向へ行かないという大きな利点がある.私は電磁場シミュレーターを用いて回折格子形状を最適化し,実験でそれの検証を行った.これにより過去のFabry-Perot cavityと同等の性能をもつring-cavityの開発に成功した.共振器換装可能な新しいジャイロトロンは過去のジャイロトロンよりハイパワーを出力できるため,全体としてハイパワーに耐え,かつ安定な光学系への見通しが立った.なお,ring-cavityの性能評価に用いた方法は私が理論的に提案した新しい手法である.次に問題となるのはcavity換装時の再現性,安定性でありこれは来年度最初の課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り超微細構造間遷移を観測することに成功した.また新しい光学系の開発も概ね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
本試験に向けての安定性・再現性の研究を行う.またパワー測定が最大の系統誤蓋となる可能性が極めて高いため,検出器のキャリブレーション手法等の研究も行う.
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Research Products
(4 results)