2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J07131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 彬 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子電磁気学 / ポジトロニウム / サブテラヘルツ光学 |
Research Abstract |
今年度は今年度は研究計画の第二段階であった,203GHzにおけるポジトロニウム超微細構造の値を直接測定する準備を行った.この測定のためにはi)周波数を換えられるサブテラヘルツ発振光源,ii)20kW以上を蓄積可能なサブテラヘルツ光共振器が決定的に必要となる.前者に関してはまず周波数固定ジャイロトロンを用いて前年度にポジトロニウム超微細構造間直接遷移を世界で初めて観測することに成功しており,その結果を学術論文として今年度発表した.このジャイロトロンは周波数固定であることと,出力パターンが汚く超微細構造測定には使用できない.私は新たにガウシアンコンバータ内蔵ジャイロトロンを開発し,その内臓cavityを適宜取り替えることで発振周波数を変化させることを考案した.今年度は実際に複数の周波数で安定発振が可能であることを確認することが出来,これにより実験を行った.ただしジャイロトロン発振の周波数線幅が1-20MHz程度と,既存の他のサブテラヘルツ光源に比べれば圧倒的に優れているものの,将来的な精密科学への応用という観点からは不十分であることが判明した.私はこの点が今後のテラヘルツ技術開発における課題であることを指摘した.本実験を行うために必要な技術ii)に関しては,前年度まで使用していたFabry-Perot cavityに性能限界があることが判明した.それは10kW以上のパワーを共振器内部に蓄積すると,厚み1μm金のメッシュパターンを用いたハーフミラーが溶解してしまう点である.これは金メッシュを熱伝導率の悪い石英基板上に蒸着していたからである.そこで私は熱伝導率の高い高抵抗シリコン基板の上に金メッシュを蒸着する新しいサブテラヘルツハーフミラーを開発した.シリコンは屈折率が高いために金メッシュと干渉し,ミラー反射率の周波数依存性が著しく悪くなるという問題点があった.私は電磁場シミュレータを用いて慎重にパラメタを調整することにより,本実験で用いる201-205GHzの領域で安定に使用出来るシリコン基板上金メッシュミラーを開発した.これによりミラーが冷却可能となり,最大25kW以上のパワーを蓄積させることが出来るようになった.冷却可能で反射率の99%を超えるハーフミラーはサブテラヘルツ領域では世界初である.これら新たに開発したサブテラヘルツデバイスを用いて,ポジトロニウム超微細構造の値を測定している.現在までに3点の周波数点で測定を行なっており,半年以内に初めての直接測定が完了する見積である、
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学技術の開発は予定通りであるが,技術開発に伴い将来的な問題点が明確になってきている.ポジトロニウム超微細構造測定も概ね順調ではあるが,世界に他に類を見ない実験であるため,未知の系統誤差が生じうるため慎重に実験を行なっている.
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Strategy for Future Research Activity |
半年以内に初めてのポジトロニウム超微細構造直接測定を0.1%程度の精度で行う.今実験によってサブテラヘルツ領域で初めて非常に精密な測定が行われており,純粋な技術への将来的な要求が明確になってきている.今後は実験と並行して本質的な技術開発も行なっていく方針である.またポジトロニウム実験で開発した光学系を用いて,全く新しい未知粒子探索実験へ応用出来る可能性が拓けた.今後はこのような実験も並行して行う.
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