2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12045242
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
隅田 泰生 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (70179282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小久保 晋 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (30347083)
中嶋 一彦 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (40340955)
長田 久美子 兵庫医科大学, 医学部, 助教授 (90068502)
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Keywords | ヘリコバクターピロリ / リポ多糖 / リピドA / 質量分析 / 免疫生物活性 / 生合成 / サイトカイン / 構造解析 |
Research Abstract |
リピドAはグラム陰性細菌の表層に存在するリポ多糖中の糖脂質であり、リポ多糖のもつ多くの免疫活性の本体である。本研究ではヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)のリピドAを対象として行った。過去2年間に約40種の異なる菌株や条件を変えて培養したピロリ菌を用いて行った研究から、ピロリ菌リピドAの構造多様性と変化を明らかとし、また大腸菌のリポ多糖やリピドAと比べてきわめてユニークな免疫生物活性を有することを発見した。今年度は、これらの研究を継続し、ピロリ菌リピドAの生合成経路、特に構造変化に関与する遺伝子のスイッチング機構を明らかとすることを、またピロリ菌リピドAによる活性化機構を明らかとすることを目的として行った。 まず、ピロリ菌リピドAの迅速なスクリーニング法にさらなる改善を行い、ピロリ菌のリポ多糖を単離することなく、従来より遙かに少ない菌体量(乾燥菌体5mg以下)でリピドAの構造をMALDI-TOF/MSによって解析できるようにした。また、文献等で報告のあったグラム陰性菌のリピドA合成経路を詳細に調べ、ピロリ菌のibpB遺伝子がリピドAの脂肪酸付加に関与する遺伝子であると推定した。そして、その遺伝子をノックアウトした変異株を数種作成し、現在それらのリピドAの構造を上記のMALDI-TOF/MS法によって解析している。今後この遺伝子を足がかりとして、ピロリ菌リピドAの生合成経路の解明を行っていく。 また、前年度までに確立したTLCブロッティング法によるリピドAなどの糖脂質の簡便な新規単離法をThermus thromophilus菌の酸性および中性糖脂質の精製に応用し、それらの構造解析や菌の遺伝子的解析に役立たせた。さらにこの方法によって、前年度までに解析した40種のピロリ菌株から2種のリピドAをin vitro実験に供しうる量を精製した。そして、大腸菌リポ多糖の細胞活性化シグナル伝達に関与する蛋白質(TLR, MyD88,Caspase I等)をノックアウトしたマウス由来の免疫担当細胞や、ヒト胃壁細胞由来の培養細胞またヒト末梢血リンパ球細胞を用いて、精製したピロリ菌リピドAによるサイトカイン(特にIL-18)産生機構を明らかとする研究を継続して行っている。
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[Publications] Ohno, Y.: "Serum protein and immunoglobrin levels among Nepalese living in southern Nepal"Enviromental Health and Preventive Medicine. 7. 119-122 (2002)
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[Publications] Isobe, T.: "ブラジル産Pariparobaの抗Helicobacter pylori成分"YAKUGAKU ZASSHI. 122. 291-294 (2002)
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[Publications] 金 庸民: "Helicobacter pylori株由来のlipid Aの構造解析と免疫生物学的作用"兵庫医科大学医学会雑誌. 27. 51-68 (2002)
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[Publications] Ah-Mee Park: "The mechanism of strong resistance of Helicobacter pylori respiration to nitric oxide"Archiv.Biochem.Biophis. 411. 129-135 (2002)
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[Publications] M.Hashimoto: "Structural study on lipid A and the o-specific polysaccharide of the lipopolysaccharide from a clinical isolate of Bacteroides vulgatus from a patient with Crohn's disease"Eur.J.Biochem.. 269. 3715-3721 (2002)
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[Publications] Y.Suda: "Preface : the special issue for lipopolysaccharide"Trends in Glycoscience and Glycotechnology. 14(76). 51-52 (2002)
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[Publications] Kusumoto S: "Synthetic chemistry and function of bacterial cell surface glycoconjugates"JOURNAL OF THE CHINESE CHEMICAL SOCIETY. 49(4). 453-458 (2002)
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[Publications] 隅田泰生: "自然免疫にかかわる細菌細胞表層の複合糖質"化学. 57(12). 70-71 (2002)
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[Publications] 長田 久美子: "らい菌. 細菌学"朝倉書店. 698 (2002)