2001 Fiscal Year Annual Research Report
大脳基底核-大脳皮質系における学習と思考の神経機構
Project/Area Number |
12210015
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
木村 實 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (40118451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 康雅 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (60332954)
松本 直幸 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (00252726)
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Keywords | 大脳基底核 / 線条体 / 視床 / 髄板内核 / CM / Pf核 / 注意 / ドーパミンニューロン / 報酬 |
Research Abstract |
大脳基底核の線条体は広範囲の大脳皮質から部位特異的な投射を受けると共に視床CM/Pf核から強い興奮入力を受けるが、この投射の生理学的な意義は不明である。この投射の意義を調べる研究を行った。サルに感覚・運動課題を行わせ、単一CM/Pf細胞の活動を記録した。細胞は、視覚、聴覚や体性感覚の多感覚種刺激によく応答した。また、新奇刺激によく応答し、順応するので注意機構への関与が示唆された。ムシモルをCM/Pf核に限局して注入して活動を遮断すると、線条体細胞の感覚応答が消失したので、線条体細胞の感覚応答にはCM/Pf核からの投射が必須であることがわかった。視床非特殊核としてのCM/Pf核の注意機構への関与を調べるために、サルに注意課題を行わせながらムシモルでCM/Pf核の活動を遮断すると、注意による反応時間の短縮効果が消失したので、視床線条体系が注意の喚起による行動発現に関与するという仮説が支持された。 強化学習課題を使ってサルの中脳ドーパミン細胞の活動を調べた。課題の学習中には、行動後に現れる報酬刺激にも非報酬刺激にも放電を増やすが、学習後には正負の報酬予測誤差を正確に反映する活動を示すことがわかった。 大脳皮質と基底核とは視床を介してループ神経回路を形成しており、この機能を知ることが大変重要であるが、まだ明らかではない。この機能を調べるための新しい研究戦略を考案して研究を行った。報酬を得るために複数のボタン押し運動課題を行っているサルの線条体の複数のニューロンの活動を同時に記録したところ、課題の初期に現れる事象に関連するニューロンから、課題の後期で報酬に近い事象に関連するニューロンに対しで情報伝達がなされることを示唆する新しい知見を得た。
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[Publications] Matsumoto, N., Minamimoto, T., Graybiel, AM., Kimura, M.: "Neurons in the thalamic CM/Pf complex supply neurons in the striatum with information about behaviorally significant events"J.Neurophysiol.. 85. 960-976 (2001)
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[Publications] Minamimoto, T., Kimura, M.: "Participation of the thalamic CM-Pf complex in attentional orienting"J.Neurophysiol.. (in press).
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[Publications] 木村 實: "大脳皮質基底核系の機能研究-現状と展望-"京都府医大誌. 110巻・2号. 89-103 (2001)
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[Publications] 丹治 順, 吉澤修治, 木村 實(他41名): "脳の高次機能「行動決定と運動の戦略」(分担執筆P.79-82)"朝倉書店. 303 (2001)