学習と記憶のダイナミックモデルとその実験的検証

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12210017
• Research Institution: Tamagawa University
• Principal Investigator: 塚田 稔 玉川大学, 脳科学研究施設・工学部, 教授 (80074392)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 相原 威 玉川大学, 脳科学研究施設・工学部, 教授 (70192838) ; 坂上 雅道 玉川大学, 学術研究所, 教授 (10225782) ; 斎藤 秀昭 玉川大学, 脳科学研究施設・工学部, 教授 (30215553) ; 櫻井 芳雄 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (60153962) ; 永野 俊 法政大学, 工学部, 教授 (30198345) ; 安西 祐一郎 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40051875)
• Keywords: 記憶方式 / 自己組織化 / 脳・神経 / 情報表現 / モデル化

Research Abstract

学習と記憶、推論と思考および行動決定のそれぞれのダイナミックな情報表現を計算論的手法、神経回路モデル、電気生理学実験、行動実験によって明らかにした。具体的には次の成果を得た。
(1)ラットの海馬スライスを用いてタイミング依存性長期増強/長期減弱の実験を実施し、タイミングに依存したLTP/LTDのプロフィールが樹状突起上のシナプスの幾何学的な位置によって異なることを明らかにした。これは海馬CA1の興奮性、抑制制結合の投写と密接に関係している。
(2)モルモットに音と電気ショックによる条件付け学習をし、学習の前後の聴覚野(AおよびDC野)ニューロン活動をオプティカルレコーデングによって記録することに成功した。条件付けされた周波数の応答領域が拡大しそれ以外の周波数は減少することが明らかとなった。
(3)時空間学習則のパターン分離能力がヘブ則に比較して極めて高いのは入力のタイミングや同期性に依存したシナプス増強が、樹状突起上に分散的にコードすることによることを理論的に明らかにした。
(4)(1)に関連してタイミング依存性長期増強(STDP)の学習理論と神経回路網のダイナミックな情報表現についてシュミレーションし、実際のサルの実験で得られた様々なスパイクデータの特徴を良く再現することが明らかとなった。
(5)2種類の刺激弁別を眼球運動を使って連続的に行う推論課題の訓練を2頭のニホンザルにたいして行い、課題遂行中のサルの前頭連合野外側部から単一ニューロン活動の記録を行った。この課題は独立に学習した2種類の刺激-反応の連鎖を組み合わせて報酬を予測するものであるが、多くの前頭連合野ニューロンは、行動実験の結果同様、実際に経験していない刺激-報酬関係でも、サルが推論により状況から報酬予測が正しくできる場合には、刺激にたいする報酬弁別的な応答を示した。

Research Products

• [Publications] M.Tsukada, T.Aihara, Y.Kobayashi: "Spike timing LTP and LTD in the CA1 area of hippocampal slices by the optical imaging."Annual Computational Neuroscience meeting, 2003. (2003)
• [Publications] T.Aihara, Y.Abiru, Y.Kashiwagi, Y.Yamazaki, M.Tsukada: "Ca2+ influx during the induction of the spike-timing dependent plasticity in the Hippocampal CA1 network"Neuroscience Research. 46・s-1. 165 (2003)
• [Publications] T.Kodama, M.Takahashi, T.Aihara, M.Tsukada, Y.Anzai: "A study on improving the accuracy of spike sorting of multiple-unit recorded data."Neuroscience Research. 46・s-1. 166 (2003)
• [Publications] 塚田 稔: "光計測装置と記憶・学習・シナプスの可塑性"電子情報通信学会誌. 87・4(in press). (2004)
• [Publications] M.Tsukada, T.Aihara, Y.Kobayashi, H.Shimazaki: "Spike-timing dependent LTP and LTD in area CA1 of hippocampal slices : An optical imaging study."Hippocamps. (to be appeard).
• [Publications] T.Aihara, Y.Kobayashi, M.Tsukada: "Spatio-temporal Visualization of Long-Term Potentiation and Depression in the Hipppocampal CA1 Area."Hippocamps. (to be appeard).
• [Publications] K.Togashi, T.Kitajima, T.Aihara, K.Hong, M.Poo, M.Nishiyama: "Gating of activity-dependent long-term depression by GABAergic activity in the hippocampus."Proc.of 33nd Annual Meeting, Society for Neuroscience. 123・4. (2003)
• [Publications] H.Urakubo, T.Aihara, S.Kuroda, M.Watanabe: "Spatial localization of synapses required for supralinear summation of action potentials and EPSPs."J.Computational Neuroscience. (in press). (2004)
• [Publications] 坂上雅道: "私の脳は論理的?行動決定の多層的処理構造"人工知能学会誌. 18・5. 568-571 (2003)
• [Publications] Kitano K, Fukai T: "Temporal characteristics of the predictive synchronous firing modeled by spike-timing-dependent plasticity."Learning & Memory. (in press). (2004)