2003 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀中国社会の構造的変動と日本-新たな日中関係史研究の模索-
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12301019
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Research Institution | JAPAN WOMEN'S UNIVERSITY |
Principal Investigator |
久保田 文次 日本女子大学, 文学部, 教授 (20060650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 比呂志 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (90269572)
松重 充浩 日本大学, 文理学部, 助教授 (00275380)
飯島 渉 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (70221744)
川島 真 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (90301861)
深町 英夫 中央大学, 経済学部, 助教授 (00286949)
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Keywords | 構造的変動 / 中華民国 / 日本 / 国家統合 / 満州 / 公衆衛生 / 新生活運動 / 外交 |
Research Abstract |
中国の国家的国民的統は伝統的観念の換骨奪胎をともないつつ、「封建的」な分権体制の欠如故に、大きな困難が伴った(田中)。ここに、統一国家・国民国家形成の難点があったのである。しかし、対外的には、「分裂」とみなされていた民国期にも、北京政府も革命派も、中央も地方も統一中国を前提とした外交活動を展開した(川島)。「満州」に冷淡とみなされていた孫文らも辛亥革命期には、「満蒙」保全の意志を日本人に示してもいた(久保田)。「満州国」は中国ではないとのイデオロギーも「王道楽土」概念などの使用により、「満州」と伝統的中国との一体性をも認めることになってしまう(松重)。1911年の辛亥革命と中華民国の成立は、即時には安定した構造変革をもたらさなかったが、長期的には統一的な近代国家形成への象徴的な事件であったといえる。 日本の植民地台湾で発達した公衆衛生・防疫体制は日本人による熱帯医学の発展をもたらし、20世紀の戦争中に、占領下の華南や東南アジアヘと移植され、今日に至っている(飯島)。蒋介石が推進した新生活運動は風俗・習慣ばかりではなく、中国の伝統的な身体観念を否定しつつ、欧米型の機能・行動をもった中国人の体型改革までもめざした(深町)。身体・病気という人間の生命・生活の根源に関わる分野の改善がめざされたことは、まさに構造的変動の方向を如実に示すものである。本計画がめざした社会史・文化史分野での成果も主にここにある。 公衆衛生体制の発展・満州租借計画の不実現、在満日本人の認識などは、当然に日本・日本人自体の問題であり、清末以来の国家統合、外交態様、生活改善等すべてが、日本の影響、日本への対応、日本との比較・関連のなかで推進されたものであることは、全員の研究が示している。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 久保田 文次: "孫文と『満州租借交渉』・『日中盟約案』再考"中国研究月報. 664号. 26-40 (2003)
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[Publications] 深町 英夫: "林檎の後味:身体美学・公共意識・新生活運動"中央大学論集. 24号. 91-102 (2003)
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[Publications] 田中 比呂志: "民国初期における地方自治の再編と地域社会"歴史学研究. 772号. 137-148 (2003)
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[Publications] 松重 充弘: "「国立国会図書館所蔵明治期(1907年11月3日〜1912年7月31)『満州日日新聞』モンゴル関係記事件名目録・解題"史滴. 24号. 185-210 (2002)
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[Publications] 川島 真: "近代『文化』都市北京の建設とその風景"アジア遊学. 40号. 146-155 (2002)
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[Publications] 飯島 渉: "笹森儀助のまなざし-『台湾視察日記・台湾視察結論』(1896年を中心に-)"歴史評論. 614号. 2-16 (2001)
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[Publications] 川島 真: "中国近代外交の形成"名古屋大学出版会. (2004)