2001 Fiscal Year Annual Research Report
極低エネルギー光励起による強い電子相関を持つ物質のフェルミ端電子構造の研究
Project/Area Number |
12304016
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
難波 孝夫 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (30091721)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落合 明 東北大学, 極低温科学センター, 助教授 (90183772)
岡村 英一 神戸大学, 大学院・理学部, 助手 (00273756)
|
Keywords | 強相関電子系物質 / フェルミ端近傍の電子状態 / 金属-絶縁体転移 / 高圧下赤外顕微鏡分光 |
Research Abstract |
強い電子相関を示す物質の物性変化はそのフェルミ準位極近傍の電子状態の変化によって決定されている。この研究は光のエネルギーが極微小な赤外線を用いた赤外分光実験が強い電子相関を示す物質の微細な電子状態変化を知る手段として有用であることに着目した研究である。本研究の目的は、先ず、強い電子相関を持つd及びf電子化合物についてその赤外スペクトルの温度変化を測定し、そこから得た詳細な光伝導度スペクトルの解析から温度誘起金属絶縁体転移に伴う電子構造の変化を明らかにすること、次に実験に用いる事が出来る強い電子相関を示す物質の多くが多結晶状態である現状を考え、その状態でもその物質が僅かでも良質な表面を持つ場合に赤外分光実験が可能な赤外顕微分光法を開発すること、及びそれを絶縁体から金属への物性の移り変わりを示すf電子系化合物に適用してフェルミ準位極近傍の電子構造の変化の詳細な情報を得ようとするものである。 本研究では今年度以下に述べる実験研究を行い夫々成果を挙げた。1.d電子系化合物の光学スペクトノレの測定。先ず温度環境に応じて金属から絶縁体への電子相転移を示す典型的物質Culr_2XS_4及びCuの代わりにZnを置換したCuxZn1-xlr_2X_4(x=0、0.1、0.3、0.4、0.5)の電子構造を赤外スペクトルから明らかにした。即ち、Znドープはホールキヤリヤーに対して電子ドープの効果を持ちそのフェルミ準位を変化させると期待される。本研究ではそれによる電子状態の明確な変化を、観測された帯間遷移ピークの低エネルギー側へのシフト及び有効キャリヤー数の減少と言う現象から明らかにした。2.高圧下赤外顕微鏡分光実験。大型放射光施設SPring-8に申請者が協力して建設した赤外観測システムに設置の赤外顕微鏡ステーションにおいて絶縁体であるf電子化合物YbSが圧力の下で価数揺動状態を経て金属に変わる過程の高圧下の赤外スペクトルを測定するとこに成功した。印加圧力は定圧から16万気圧まで。吸収端が圧力によって潰れて行く様を観測し、その減少量の圧力依存係数を正確に決めた。3.本研究の目的に適う高圧で金属へ移行する物質TmXとSmX(X : S, Se, Te)の単結晶育成及びその基礎物性測定と品質評価(落合)。
|
Research Products
(1 results)