2000 Fiscal Year Annual Research Report
X線誘起トンネル電流による走査トンネル顕微鏡での元素分析(元素分析STMの開発)
Project/Area Number |
12305008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
櫻井 利夫 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20143539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 幸雄 東京大学, 物性研究所, 助教授 (80252493)
辻 幸一 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (30241566)
中山 幸仁 東北大学, 金属材料研究所, 講師 (50312640)
薛 其貞 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (50323093)
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Keywords | 超小型走査トンネル顕微鏡 / X線発生装置 / シンクロトロン放射光 |
Research Abstract |
走査トンネル顕微鏡(STM)は、物質表面の原子を観察できる顕微鏡として、その有用性は言を待たない。しかしながら、STMにより観察されている原子が何であるか元素同定する手法は現在の段階でまだ確立されていない。もちろんSTM像における各元素の見え方のバイアス電圧依存性や、トンネル電流.バイアス電圧特性(トンネル分光)の違いなどを利用した元素識別の方法は提案されているが、これらの手法で適応できる系は極めて限定される。これは、トンネル電流はフェルミ準位近傍の電子状態を反映していることから周りの環境の影響を受けやすく、一般的な元素分析手法には適さないからである。一般的な元素分析手法として活用するには、オージェ電子分光やX線光電子分光のように、内殻電子に関する情報を得る必要がある。そこで本研究ではSTMにおける試料面に全反射条件でX線を照射しその際試料表面近傍原子の内殻から励起され放出される光電子を探針で局所的に検出することにより、試料表面でのSTM像に直接関与する原子の元素分析を行おうとして本研究を進めてきた。 (1)実験室でのX線照射.超高真空STMシステムのX線単色化 当初X線源を最近開発された21kW超強力X線発生装置を導入して研究をすすめようとしたが、重量・サイズ・実験環境などの諸問題をも考慮してこれを断念し小型の封入型X線発生装置を用いてこれにモノクロメーターを取り付けX線源を単色化し、実験を進めていくこととした。探針で検出される電流のX線エネルギー依存性およびその探針・試料間に印可されるバイアス電圧との関連を測定した。X線エネルギーを試料元素の結合エネルギーよりも真空準位を越えない程度に若干高く設定したときに、X線照射による探針電流が対応するバイアス電圧で変動するかを確認した。また、このX線誘起トンネル電流測定を2元素を含む試料に応用し、設定した元素上に探針がある時のみその電流が検出できるかどうかを確認し、さらにSTM像を撮りながらバイアス電圧を変調させその時の探針電流の変動を像にすることにより、X線誘起トンネル電流のイメージ化も試み、それと元素分布・表面構造との関連を明らかにすることができた。 (2)シンクロトロン放射光によるX線照射STM(大気)実験 本研究の中心となるこの課題の遂行に超小型のポータブル超高真空用STMを設計ユニソクに発注した。これが納入され現在立ち上げを進めている。
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