2000 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ音文化における伝統の形成と変容:その社会的要因の研究
Project/Area Number |
12371006
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
川田 順造 広島市立大学, 国際学部, 教授 (50107835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池谷 和信 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 助教授 (10211723)
塚田 健一 広島市立大学, 国際学部, 教授 (00227365)
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Keywords | 音文化 / 伝統の動態 / マリ / ガーナ / アンゴラ / 木琴 / 宮廷太鼓 / 親指ピアノ |
Research Abstract |
平成12年度の課題は、アフリカの音文化における「伝統」の形成と変容の過程を、社会的コンテキストとの関連で、サハラ以南3カ所の現地調査で得られたデータによって検討することである。 川田は、これまでの研究で明らかにし得たマンデ/ハウサ二大音文化複合を分ける特徴的な要素の一つである木琴の(1)素材と製法(2)音組織など、音具自体の検討と共に、(3)奏法習得の方法、伝承の組織、演奏の場などの社会的側面について現地調査を行った。木琴を特徴的な構成要素とするマンデ音文化の中核部とみなしうる、マリ西南部のマンデ語族系社会(木琴は7音階)と、そこから比較的新しい時代に木琴が伝播したとみられる、ブルキナファソ西部のグル語族系社会(木琴は5音階)とをとりあげ、両者を対比させて上記の点を調査した。(1)(2)については、かなりの程度明確にしえた。(3)については、(a)内婚的職能集団との結びつき、(b)5/7音階の差異と地域言語の音調の差異との関連を、今回現地で得られた資料を帰国後他の関連資料も参照して検討することが、当面の課題である。 塚田の今回の調査では、ガーナ、ファンティ族の伝統的な宮廷太鼓合奏フォントンフロムのある曲に、ガーナの大衆音楽ハイライフの様式が混入していることが明らかになった。伝統的な王宮の音楽にどのようにして大衆音楽の要素が取り入れられたのかを調査していく過程で、独立後の民族主義的な文化教育政策、新たな伝統文化の復興を目指す芸能集団の誕生、マスメディアの発達による聴衆の音楽嗜好の変化など、フォントンフロムの新しい様式の成立にはさまざまな「ポストコロニアル」な社会状況が関わっていることが判明した。 池谷は、アンゴラ北東部でのチョクエ社会で音文化の中核をなす親指ピアノについて調査し、次の点を明らかにした。1.チョクエの親指ピアノは5種類とされてきたが、アフリカの一社会内でおそらく最大数の7種類を確認した。2.採録した43曲はすべて男性の独奏で、歌詞がある。内容は、(1)生業活動、(2)男女・親子関係、(3)日常の出来事、(4)実用的教訓、(5)村の事件、(6)割礼儀礼、(7)植民地時代のこと、など。3.割礼儀礼ムカンダで、太鼓と共に親指ピアノの演奏が不可欠だったが、現在では太鼓のみだ。変化の要因は検討中だが、チョクエの音文化のでの親指ピアノの役割が変わってきたことを示している。
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Research Products
(2 results)