2002 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ音文化における伝統の形成と変容:その社会的要因の研究
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12371006
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
川田 順造 神奈川大学, 法学部, 教授 (50107835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚田 健一 広島市立大学, 国際学部, 教授 (00227365)
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Keywords | 伝統の形成と変容 / 巨視的次元 / 微視的次元 / ほめる芸 / 歴史の認識と表象 / 文化政策 / 著作権 / ポピュラー音楽 |
Research Abstract |
平成14年度は、3年計画の研究課題「アフリカ音文化における伝統の形成と変容:その社会的要因の研究」の最終年度にあたり、総括と報告書作成を行なった。文化における「伝統」は古来不変ではなく、歴史的状況と社会的要因のもとに「形成」され、その状況や要因の変化に伴って「変容」して来たものである。「伝統」のそのような認識に立って、「音文化」も捉えようと試みた。その際巨視的な次元で問題にされるものと、微視的な次元でのものとがある。前者は、アフリカ全体の文化史的な比較の視野の中での、要素間の関連の必然性や可能性に基づいて、歴史的な前後関係因果関係を問題にする。この方法は、音文化のように長期的持続が問題になる事象、とくにサハラ以南アフリカの無文字社会では不可避でもある。巨視的研究に当たる川田の「音文化と歴史認識・歴史表象形成の相互関係、およびその変容」で、川田は西アフリカ内陸社会で社会的諸制度と結びついて発達した「ほめる芸」が、社会的状況の変化に対応して歴史認識・歴史表象の形成と変容にもった関わりを追究した。微視的な次元で捉えうるもの、つまり実年代で指示できる出来事に基づく新しい時代の短期的変化の研究は、塚田によってなされている。この種の変化では、政治的意図的な要素が重要な役割をもつ。1950年代末アフリカでの先頭を切って、それぞれ英仏の植民地から独立して国家を形成した、ガーナにおける音文化の伝統の認識と変容は事例としても興味深い。塚田はファンティ社会(ガーナ)の音楽変化がガーナ独立後の文化政策とのあいだにもった関連を追究し、著作権制度の変容についても検討している。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 川田 順造: "音文化の地域的展開を探る-イスラームを手がかりに"民族学研究. 65-1. 1-8 (2002)
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[Publications] 川田 順造: "マンデ音文化とハウサ音文化-イスラーム音文化の地方的展開"民族学研究. 65-1. 62-77 (2002)
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[Publications] 塚田 健一: "ハイライフとフォントンフロム-ンクルマの文化政策とガーナ宮廷音楽の変容-"アフリカ研究. 60. 41-52 (2002)
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[Publications] 塚田 健一: "アフリカ音楽研究の視座"アフリカ研究. 60. 35-39 (2002)
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[Publications] 川田 順造: "口頭伝承論 上・下"平凡社. 446,422 (2002)