2002 Fiscal Year Annual Research Report
野生チンパンジーの行動の地域変異と文化的行動の獲得過程
Project/Area Number |
12375003
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 利貞 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40011647)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五百部 裕 椙山女学園大学, 人間関係学部, 助教授 (20252413)
乗越 皓司 上智大学, 生命科学研究所, 助教授 (50119137)
上原 重男 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (20145965)
中井 將嗣 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員
中村 美知夫 (財)日本モンキーセンター, リサーチフェロ (30322647)
|
Keywords | Culture / Tradition / Social learning / Chimpanzee / Grooming / Courtship / Agonistic display / Feeding Behavior |
Research Abstract |
五百部は、1ヵ月間、マハレM集団の遊動域内の哺乳類密度を調べた。1995年と同じ手法で三つのルートを各6回センサスし、チンパンジーの狩猟対象となっている哺乳類8種について資料を集めた。島田(博士1年)は、2001年度から引き続き滞在し、チンパンジーの音声伝達のうちパントフートの発達と性差を調べた。西江(修士2年)は、2002年8月3日から3ヵ月強、オオアリ釣り行動の獲得過程について調べた。M集団54頭のうち、43頭のアリ釣りを確認した。これは、最年少の3歳4ヶ月のメスや2001年の移入メスを含む。さらに、釣り場所となった木の樹種と位置、食べられたアリの種の同定・栄養価,アリ釣り場面での母子間交渉を、現在分析中である。中井は、マハレに2ヵ月滞在し、チンパンジー5個体の骨格標本を計測し、疾病を調査した。ゴンベとは異なり、マハレには関節疾患が多かった。外傷はゴンベ同様マハレでも多く、他者からの攻撃と高所からの転落の両方が原因だと推定された。中村は、西アフリカのボッソウのチンパンジーを調査した。コドモのオスが一頭<ブーッブーッ>と唇の間から息を出すような音を立てることに気づいた。それ以外の個体は、普通のリップスマッキングが多い。発情しているメスを囲っている二頭のオトナオスオスが、いずれも、移動を促すとき、かかとをコンコンとリズミカルに木などに打ちつけて音を出す。これは、マハレでは見られたことがなく、ボッソウの文化的行動である可能性がある。西田は、マハレのチンパンジーの文化行動と考えられている求愛誇示,威嚇ディスプレー,対角毛づくろい、ソーシアル・スクラッチ、リーフレイキングなどを2ヵ月間ビデオ撮影し、行動の発達と個体変異を調べた。上原と乗越は、本研究では野外調査に参加せず、メールによる情報交換だけをおこなった。
|
Research Products
(16 results)
-
[Publications] Nishida T et al.: "Demography, female life history, and reproductive profiles among the chimpanzees of Mahale"American Journal of Primatology. (In press). (2003)
-
[Publications] Nishida T: "Harassment of mature female chimpanzees by young males in the Mahale Mountains"International Journal of Primatology. 24(3). 503-514 (2002)
-
[Publications] Nishida T: "A self-medicating attempt to remove the sand flea from a toe by a young chimpanzee"Pan Africa News. 9(1). 5-6 (2002)
-
[Publications] Shimada M: "Social scratch among chimpanzees in Gombe"Pan Africa News. 9(2). 21-23 (2002)
-
[Publications] Shimizu D et al.: "The four chimpanzees' skulls collected in the Mahale Mountains, Tanzania"Anthropological Science. 110(3). 251-266 (2002)
-
[Publications] Gunji H et al.: "Extraordinary low bone mineral density in an old female chimpanzee from the Mahale Mountains National Park"Primates. 44(2). (2003)
-
[Publications] 西田 利貞: "リーフ・レイキング:新たに発見された野生チンパンジーの遊び"霊長類研究. 18(3). 373 (2002)
-
[Publications] 中村美知夫, 西田利貞: "野生チンパンジーのモールディング:チンパンジーは本当に教えないのか?"霊長類研究. 18(3). 373 (2002)
-
[Publications] 五百部裕, 上原重男: "アカコロブスの対チンパンジー戦略の地域差"霊長類研究. 18(3). 373 (2002)
-
[Publications] 西田利貞, 上原重男, 川中健二: "マハレのチンパンジー"京都大学学術出版会. 598 (2002)
-
[Publications] 西田利貞(石田英実, 中務真人, 荻原直道編): "人類学と霊長類学の新展開(日本サル学と文化の研究)"金星舎. 1-6 (2002)
-
[Publications] 五百部裕(西田, 上原, 川中編著): "マハレのチンパンジー(アカコロブスの対チンパンジー戦略)"京都大学学術出版会. 245-260 (2002)
-
[Publications] 上原重男, 五百部裕(西田, 上原, 川中編): "マハレのチンパンジー(昼行性哺乳類の分布と生息密度:チンパンジーの獲物たち)"京都大学学術出版会. 129-152 (2002)
-
[Publications] Boesch C, Uehara S, Ihobe H (Boesch Hohmann Marchant eds.): "Behavioural Diversity in Chimpanzees and Bonobos"Cambridge University Press. 221-230 (2002)
-
[Publications] Nakamura M (Boesh, Hohrnann, Marchant eds): "Behavioural Diversity in Chimpanzees and Bonobos"Cambridge University Press. 71-89 (2002)
-
[Publications] Nishida T (de Waal, Tyack Eds.): "Animals Social Complexity : Intelligence, Culture, and Individualized Societies"Harvard University Press. 392-413 (2003)