2003 Fiscal Year Annual Research Report
野生チンパンジーの行動の地域変異と文化的行動の獲得過程
Project/Area Number |
12375003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 利貞 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40011647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
座馬 耕一郎 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員
中村 美知夫 (財)日本モンキーセンター, リサーチフェロー (30322647)
上原 重男 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (20145965)
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Keywords | チンパンジー / 文化 / 社会的学習 / 模倣 / 地域間比較 / モールディング / 行動の発達 / マハレ山塊 |
Research Abstract |
マハレ、ゴンベ(タンザニア)、カニャワラ、ンゴゴ、ブドンゴ(ウガンダ)、ボッソウ(ギニア)の6つのチンパンジー調査地を訪問し、集団間で行動の有無と、行動パターンの詳細を比較した。マハレでは文化的行動の発達も調べた。「社会的スクラッチ」は、マハレとンゴゴでは見られたが、そのやり方は異なり、また毛づくろい時の発声は、両者で異なった。マハレの「枯葉引き」という遊びは多数のコドモで見られ、少なくとも10年以上続いている伝統であるが、他の調査地では伝統としてはない。マハレでは、コドモが谷などで水を使ったさまざまな遊びを展開する。このうち、顔を水面に向け、首を振り、自分の影の動きを楽しむ「水面首振り行動」は、少なくとも数頭の雄のコドモに見られる。また、「葉のスポンジ」の利用も、数頭の雌雄の個体に見られる。これらの様々な水遊びのパタンは、コドモからコドモへ伝播している可能性が高く、流行、あるいは萌芽的な文化といえるかもしれない。また、6年前に得た水遊びの撮影資料との間に差異も発見した。「水中石投げ」などの示威行動「葉の噛みちぎり」や「灌木曲げ」などの求愛誇示もマハレの伝統である可能性が高い。ボッソウでは新たに「踵叩き」、「掌上寄生虫潰し」、「相互性皮触り」などの文化的行動を発見した。個体は、成長とともに、採食、毛づくろい、道具使用、求愛、示威の順に、伝統を身につけていく。離乳期までには、ほとんどの伝統を獲得する。マハレでは、対角毛づくろいの発達に母親による教示(モールディング)が関与している可能性があり、また一頭の雌は移籍前の集団のパタンを部分的に維持していた。チンパンジーでは、個体による発明・発見は繰り返し起こるが、文化として固定するのはまれである。個体間の行動の伝播が遅いからだと考えられる。父子間の行動の類似を調べるため、M集団の全個体から、糞などのDNA資料を収集し、Y染色体上の遺伝子を解析しはじめた。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] Nishida, T.: "Individuality and flexibility of cultural behavior patterns in chimpanzees"In : Animal Social Complexity : Intelligence, Culture, and Individualized Societles. Harvard University Press. 392-413 (2003)
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[Publications] Nishida, T.: "Demography, female life history, and reproductive profiles among the chimpanzees of Mahale"American Journal of Primatology. 59. 99-121 (2003)
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[Publications] Nishida, T.: "Leaf-pile pulling : An unusual play pattern in wild chimpanzees"American Journal of Primatology. 60. 167-173 (2003)
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[Publications] Nishida, T.: "Harassment of mature female chimpanzees by young males in the Mahale Mountains"International Journal of Primatology. 24(3). 503-514 (2003)
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[Publications] Nishida, T.: "Variable grooming behaviours in wild chimpanzees"Folia Primatologica. 75. 31-36 (2004)
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[Publications] 西田利貞: "社会の多様性"新しい教養のすすめ-生物学(昭和堂). 127-150 (2003)
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[Publications] Nakamura, M.: "Eleven-year old male chimpanzee outranks ex-alpha adult male at Bossou"Pan Africa News. 10(1). 9-11 (2003)
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[Publications] Nakamura, M.: "Proximate factors of different types of grooming hand-clasp in Mahale chimpanzees : Implications for chimpanzee social customs"Current Anthropology. 45(1). 108-114 (2004)
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[Publications] 中村美知夫: "同時に「する」毛づくろい-チンパンジーの相互行為からみる社会と文化"人間性の起源と進化(昭和堂). 264-292 (2003)