2002 Fiscal Year Annual Research Report
類人猿と人類の共生・共進化に関する社会生態学的研究
Project/Area Number |
12375004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山極 寿一 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60166600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 穣 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (40172978)
湯本 貴和 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (70192804)
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80153419)
澤田 昌人 京都精華大学, 人文学部, 助教授 (30211949)
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Keywords | ゴリラ / チンパンジー / 狩猟採集民 / 生態学 / 共存 / 共進化 / 果実 / 樹上性 |
Research Abstract |
本研究は、人類発祥の地であるアフリカの熱帯林で、人類に最も近縁なゴリラとチンパンジーが発達させてきた社会生態学的特徴を調査し、同じ環境で人類が示す特徴を比較することによって、類人猿と人類の種分化の歴史を再構築することにある。本年度はガボン共和国のムカラバ保護区へ代表者、分担者、協力者を派遣してゴリラとチンパンジーの共存関係に関する生態学的調査を実施するとともに、ガボン全域で狩猟採集民の生態学的知識に関する調査を行った。コンゴ民主共和国は政治情勢が不穏なため、今回も研究協力者のA.K.Basabose氏を日本へ招へいしてこれまでカフジ・ビエガ国立公園で収集してきたゴリラとチンパンジーの社会生態学的資料の分析を行った。ムカラバ保護区では気温と雨量を毎日モニターしながら、主要な果実のフェノロジーを月に2度調査し、ゴリラとチンパンジーの群れを追跡して観察した。その結果、雨季には果実の種類が他の生息域に比べて圧倒的に多いのに、乾季には極端に果実の種類も量も減少することが判明した。果実の不足する乾季をゴリラは葉食に切り換えて、チンパンジーは遊動域を拡大して凌いでおり、両種が異なる果実を食べ分けることが種間の競合を減らしていると考えられる。ただ、両種類人猿が果実の豊富な時期には果樹で頻繁に接触しているので、行動レベルでも競合を抑えていることが示唆される。これはこれまでの報告にはない新しい発見であり、今後の調査によって両種の共存の進化史に新たな知見を加えられると期待している。今回の調査でムカラバ保護区のゴリラは他の生息域と比べて樹上性が強いことが明らかになった。現在、オナガザル科サル類の樹上における移動様式と比較しており、ゴリラの樹上生活への形態学的な適応を検討できると考えている。また、狩猟採集民バカのキャンプで参与観察を行った結果、父系血縁の小集団で広い範囲にわたる植物の分布に関する知識を共有していることがわかった。現在それを類人猿の生態的と特徴と比較している。これらの分析を通じて、類人猿と分岐した人類祖先の生態学的特徴を解明できると考えている。
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[Publications] Yamagiwa, J.: "Bushmeat poaching and conservation crisis in Kahuzi-Biega National Park, DRC"Journal of Sustainable Forestry. 16. 115-135 (2003)
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[Publications] Hamada, Y, Udono, T.: "Longitudinal analysis of length growth in the chimpanzee (Pan troglodytes)"American Journal of Physical Anthropology. 118. 268-284 (2002)
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[Publications] Basabose, A.K.: "Diet composition of chimpanzees inhabiting the montane forest of Kahuzi, Democrastic Republic of Congo"American Journal of Primatology. 58. 1-21 (2002)
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[Publications] 湯本貴和: "植生調査と植物標本の処理"霊長類研究. 18. 284-289 (2002)
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[Publications] 竹ノ下祐二, 湯本貴和: "食物資源の評価のための果実量と花期の調査"霊長類研究. 18. 290-294 (2002)
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[Publications] 山極寿一, 下岡ゆき子: "霊長類の日遊動距離と遊動域の推定"霊長類研究. 18. 326-333 (2002)
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[Publications] 澤田昌人(共著): "現代アフリカの社会変動-ことばと文化の動態観察"人文書院. 441 (2002)