2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12410039
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
斉藤 耕二 白百合女子大学, 文学部, 教授 (70014686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 洋一 白百合女子大学, 文学部, 教授 (20145650)
澤田 瑞也 神戸大学, 発達科学部, 教授 (40015764)
菊地 章夫 岩手県立大学, 社会福祉学部, 教授 (10007289)
鈴木 忠 白百合女子大学, 文学部, 助教授 (40235966)
首藤 敏元 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (30187504)
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Keywords | 対人関係 / 向社会的行動 / 共感性 |
Research Abstract |
近年、「いじめ」や「虐待」など他者に苦痛を与える行動の増加にともなって、このような対人関係の障害を防・ぎさらには向社会的行動などの積極的社会行動を促進するものとして「共感(共感性)」への関心が高まってきている。本研究では「共感」と呼ばれている行動とこうした行動への傾向特性としての「共感性」の本質を解明し、その形成を規定している要因を探って生涯にわたる発達の過程を明らかにすることを目的としている。総合研究に参加する研究者全員が集合した会合において、資料の収集の方法及び各研究者の役割の分担について意見の交換を行ったが、いくつかの基本的な問題が指摘された。第1に、「共感」あるいは「共感性」の概念に関して、現在様々な定義が研究者によって行われていて、実証的資料を基礎としたその本質的条件を明確にする必要がある。第2にこれまでに様々な測定法、尺度が開発されているが、その測定結果相互の関係について十分な検討がなされていない。第3に発達段階によって測定に用いられる手続きが異なっていて、いくつかの発達段階にまたがる変化の過程を分析する適切な用具が欠けている。こうした結論をふまえて、研究の初年度である今年度は、まず「共感」の概念についての検討を先行研究に関する文献資料を行い、その生涯発達の過程の測定に利用可能な尺度の開発を目指すことにした。共感を多次元的構成とする、Davis,M.H.の「対人的反応性指標(IRI)」を解き口として上記の問題に迫るために、この尺度を中心とした質問紙調査を大学生を対象として実施した。測定内容の検討のために尺度を構成している項目相互の関連を分析するために因子分析および外的基準変数との相関係数の算出などの統計処理を実施したが、調査実施対象となった標本が女子大学生に限られたため、結論の一般化には重大な制約があり、性別、発達段階についての更なる検討が次の課題として残されている。また子どもの共感性の発達の重要な変数と考えられる、親の夫婦関係について自由記述のアンケート調査を行った。夫婦のコミュニケーションや共感的態度についての言及は、30代に比べて50代では少なく、また妻に比べて夫では少ない傾向がみられた。一方で、夫婦が別々の時間を持ち、別々に行動できることが結婚満足度と結びついていることが示唆された。この傾向は特に、妻の側に顕著であった。
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