2002 Fiscal Year Annual Research Report
保健医療システム改革と非営利組織及びボランティア・ネットワークの機能分析
Project/Area Number |
12410059
|
Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
時井 聰 淑徳大学, 社会学部, 教授 (60197861)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 健作 高知大学, 人文学部, 教授 (90248625)
|
Keywords | 保健医療システム / NPO(非営利組織) / 専門職(Profession) / ネットワーキング / 市民参加 / 社会的合意形成 / 公共財配分の意思決定 / ボランティア |
Research Abstract |
標本調査・分析そしてインタビュー調査を通し多くの知見を得ることが出来たが、とりわけ注目されることは、アメリカの非営利セクターがフォーマルな医療組織・制度およびその過程を補完する部分とそれから逸脱する部分の二つの領域が存在することであった。前者は、「強制された」非営利(病院)によって担われている。これらは、医療の市場化を通して、一部は営利化が進行しており、残りはボランタリズムと経営の軋礫にさいなまれている。後者は、主に草の根的な市民的ボランティア・アクションによって支えられており、そこでは医療専門職と市民またはクライアントとの広範な協力・協同関係の下で保健医療サービスが供給され、さらにはフォーマルな医療システムの抱える問題を解決する様々な試みがなされていることであった。このような実態を踏まえ、我々は非営利組織の下で行われるボランティア・アクションのフォーマルな保健医療システムへの影響を次のように評価するに至った。医学と医療技術の発展を背景にフォーマルな医療システムでは、医療専門職とクライアントの関係が分断され、かつ医療専門職が個別領域に分断されることによって本来あるべき医療の総合性が解体されがちであるが、草の根の非営利組織は専門職間および一般市民との協力・協同関係の回復を媒介として医療の総合性を回復しようとするとともに、自らの活動経験に基づいてフォーマルなシステムの側に課題提起をしているのである。しかしながら、これら諸団体の活動は各個個別的な状況に終始しており、その背景には保健医療を市場財としてしか受け入れないアメリカ独自の社会構造および社会意識の存在が垣間見られる。とはいえ、これにとって代わる新しき社会的価値観(public goods)を形成しうる、ボランタリー・ネットワークの主体となりうる非営利組織(コミュニティ・オーガニゼーション)の胎動も伺えた。
|