2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本企業の海外直接投資が国内雇用に与える影響に関する分析〜時間の経過に伴う波度効果の変化を中心に〜
Project/Area Number |
12430004
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Research Institution | KEIO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
樋口 美雄 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (20119001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 正浩 獨協大学, 経済学部, 専任講師 (70303047)
新保 一成 慶應義塾大学, 商学部, 助教授 (80226349)
北村 行伸 一橋大学, 経済研究所, 教授 (70313442)
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Keywords | 海外直接投資 / 雇用創出 / 雇用喪失 / 波及効果 / 海外小会社 / 海外生産委託 |
Research Abstract |
旧通産省『企業活動基本調査』における企業永久コードを使い、1994年から98年にかけての企業パネルデータを作成した。これを基礎データとし、94年から96年の3年間にわたって完全パネルデータの得られる製造業9,310社、さらには96年から98年の3年間にわたって完全パネルデータの得られる10,285社について、海外子会社を保有する企業と保有しない企業、さらには海外企業への生産委託をしている企業としていない企業に分類し、業種別に雇用の増減を比較した結果、次のような結論を得た。(1)海外子会社を保有する企業、海外に生産委託を行なう企業が電気機械器具製造業や輸送用機械器具製造業を中心に急増している。(2)海外子会社を保有した初期段階では国内雇用の削減は観察されないが、時間の経過とともに削減効果は拡大する。(3)雇用の純変化率を雇用拡大企業における雇用創出率と雇用削減企業における雇用喪失率に分け比較すると、海外子会社を保有する企業と保有しない企業の間で雇用喪失率に有意な差は存在しない。海外子会社を保有する企業で雇用の減少率が大きいのは、雇用喪失率が小さいことによって起こっている。このことは、従来、生産量を拡大しようとしたとき国内での生産を拡大し雇用を増やすことによって対応していたのが、近年、むしろこの分を海外生産に回すことによって生産量を拡大するようになったことを示唆する。(4)海外への生産委託を増やしている企業においてもそうでない企業に比べ雇用は減少しているが、これも生産量の拡大企業が社内生産から海外委託に切り替えることによって生じているといえる。(5)以上のことから、積極的に生産量を拡大する企業において、国内雇用の伸びなくなったことが国内雇用を減らす要因であるとの結論を得た。『賃金構造基本調査』に基づき、経済のグローバル化が賃金構造に与えている影響を分析した結果でも、統計的に有意な効果が検出されている。
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[Publications] 樋口 美雄: "地域雇用における政府の役割"財務総合研究所より. (2002)
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[Publications] 樋口 美雄, 中嶋 隆信, 中東 雅樹, 日野 健: "財政支出の推移と地域雇用"フィナンシャルレビュー. 第67号. 120-149 (2003)
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[Publications] 樋口 美雄, 新保 一成: "企業パネル・データによるわが国の雇用創出・雇用喪失分析"ミクロ統計分析. 第4巻. 186-351 (2002)
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[Publications] 樋口 美雄: "わが国における雇用政策の特徴とその推移"日本経済制度・経済政策. 149-166 (2003)
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[Publications] Y.Higuchi, M.Abe, P.Kuhn, M.Nakamura, A.Sweetman: "Worker Displacement in Japan and Canada"Losing Work, Moving on. 195-292 (2002)
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[Publications] 北村 行伸: "ユーロ圏へのわが国企業の展開"海外進出企業総覧2002<国別編>. 臨時増刊号. 25-31 (2002)
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[Publications] 北村 行伸: "パネルデータ分析の新展開"経済研究. 54・1. 74-93 (2003)
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[Publications] 北村 行伸: "企業活動における法人税負担の実態"『我が国企業における統治構造の変化と生産性の関係に関する調査研究(3)』機械工業経済研究報告書. (2003)
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[Publications] 樋口 美雄: "地域の内発的雇用創出を急げ"かんぽ資金. 15年4月号. 4-9 (2003)
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[Publications] 樋口 美雄: "日本型ワークシェアリングの実践-仕事と暮らしを考える"生産性出版. 243 (2002)