Research Abstract |
シロイヌナズナを用い,耐塩性光合成生育突然変異体pst(photoautotrophic salt tolerance)を2系統得た(Plant Cell,11,1195-1206,1999).これらのうち,耐塩機構が未解析のpst2について,その機構の解析を試みた. Na^+放出を^<22>Na^+により,植物体内へのK^+取り込みをRb^+により,測定した.200mMNaCl含有培地において,pst2におけるNa^+の植物体外への排出は,野生体のそれよりも有意に高かった.また,pst2のこの能力は,NaCl処理に係わらず,恒常的に検出された.一方,脱共役剤CCCPの培地への添加および培地のpHを上昇させる実験により,pst2の耐塩性が野生体と同程度まで弱くなることが観察された.以上のことより,pst2においては,細胞外NaCl濃度が高い場合も,H^+をサイトゾルから放出して細胞膜を介したH^+勾配を形成し,Na^+/H^+-アンチポーターにより,Na^+が排出されるという機構が想定された.細胞内H^+濃度の低下は,細胞膜H^+-ATPase,液胞膜H^+-ATPase,および液胞膜H^+-PPaseの関与が考えられる.pst2の耐塩性は継続的で、200mMNaCl存在下で開花まで可能であることから,細胞膜H^+-ATPaseの関与が最も有力であると考えた.ウェスタンブロット法により,根における細胞膜H^+-ATPaseの含量を比較したところ,pst2と野生体との間に,有意な差は見出せなかった.したがって,他の機構の介在が考えられる. pst1およびpst2突然変異系統における耐塩性は劣勢遺伝子支配であり,野生系統における耐塩性抑制遺伝子の発現を想定させる.変異系統における遺伝子発現の変化を包括的に理解するために,かずさDNA研究所より譲渡された13,000個のESTクローンを用い,ナイロン膜DNAマクロアレイを作成した.両変異系統をそれぞれ塩ストレスに曝し,その際の各遺伝子の発現をDNAマクロアレイにより解析した.
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