2001 Fiscal Year Annual Research Report
作物における光合成同化産物の分配・利用のダイナミクスとその制御機構
Project/Area Number |
12460009
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
巽 二郎 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (00163486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 章 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (30230303)
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Keywords | 13C / 15N / 物質分配 / 無効分げつ / 水稲 / 再転流 |
Research Abstract |
安定同位体の13Cと15Nを用いて,水稲における物質動態を解析した。最高分げつ期の少し前の時期に,圃場で生育した水稲の主茎および第4葉からの分げつに15Nで標識した尿素を噴霧し,10日後の転流を調べた。品種は黄金錦(日本型,少げつ性)とIR36(インド型,多げつ性)を用い,窒素追肥量が異なる区(低N区と高N区)を設けた。茎数の増加は低N区よりも高N区でまさった。有効茎数は黄金錦の高N区で顕著に増加したが,IR36では有効茎数の増加が認められなかった。両品種ともに主茎に供与した場合は各葉位の1次分げつへ,第4葉分げつに供与した場合はその分げつの2次分げつへ多く分配されたが,主茎への転流は少なかった。このようなNの転流は,とくに低N区において活発であった。このことは低N条件において,作物体内のNの再転流が活発となるためであると考えられた。 次に中生新千本(日本型,多げつ性)と密陽23号(日印交雑型,少げつ性)を加え,最高分げつ期直前の個体全体に13C標識二酸化炭素ガスと15N標識尿素を供与し,53日後の出穂期に転流を調べた。無効分げつに取り込まれた15Nの有効分げつへの再分配の程度は低追肥区で高く,黄金錦では約7%,中生新千本と密陽23号では約20%,IR36では約25%と計算された。高追肥区では無効分げつへの残存量が多く,そのため再分配が低下し,とくに日本型品種で低かった。13Cの分配の傾向は15Nとほぼ同様であったが,Nの方がより効率よく有効茎に回収される傾向にあった。以上の結果から,水稲において,無効茎から有効茎へのCとNの再転流はかなり多く,とくに低N条件下において多げつ性の品種の場合,有効茎の成長に無視できない役割を果たしていると推定された。
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[Publications] Rao, T. P. ら: "Regualtion of rhizosphere acidification by photosynthetic activity in cowpea (Vigna unguiculata L. Walp.) seedlings"Annals of Botany. 89. 213-220 (2002)
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[Publications] 坂本有加ら: "保水シート耕方式の養液栽培における根域の気相/液相比率がトマトの生育・収量に及ぼす影響"園芸学雑誌. 70. 622-628 (2001)
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[Publications] 坂本有加ら: "トマト幼植物の生長および養水分吸収に及ぼす培養液流動の影響"生物環境調節. 39. 199-204 (2001)
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[Publications] 神戸 崇ら: "水稲における主茎と分げつ間の窒素の移動:葉面散布した15Nの追跡"日本作物学会紀事. 70(別2). 151-152 (2001)
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[Publications] 石井妙子, 巽 二郎: "カラスビシャクの球茎とむかごの肥大に及ぼす温度の影響"日本作物学会紀事. 70(別2). 289-290 (2001)
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[Publications] Rao, T.P.ら: "Root exudation of C and H_2O: implications to soil compaction and drought stresses"In Roots: The dynamic interface between plant and earth, proceedings of the 6^<th>ISRR symposium, Nagoya, Japan. 138-139 (2001)
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[Publications] 巽 二郎: "作物の栄養, 作物学事典(分担執筆)"朝倉書店. 158-162 (2002)