Research Abstract |
火山攪乱地の渡島駒ヶ岳,河川攪乱地の札内川,豊平川支流を中心に,調査区を設定した。本年度は河川攪乱地を主体に,調査区の粒径分析,温度,水分環境,更新実態,のほか,代表的調査区では個体の器官量配分,根の形態,蛍光クロロフィル反応を測定した。 河畔攪乱地に生育するヤナギ類の成長解析の結果,砂地に優占するとされるオノエヤナギ,エゾノキヌヤナギと,礫地に優占するオオバヤナギでは,実生の器官量配分に違いが見られ,礫地のヤナギの方が地下部への配分量が大きい傾向が認められた。水分環境は降雨に伴って大きく変動し,夏期の降雨後4日目には含水率5%以下と乾燥した。実生の育苗実験では,乾燥状態とした場合,礫地のヤナギ実生の方が枯死率が高かった。礫地に更新するオオバヤナギ,ドロノキ,ケショウヤナギは直根性が著しく,特に定着初期に深さ方向の根の成長を優先させていることが示唆された。 クロロフィル蛍光反応による解析からは,夏期のヤナギ類は,幼樹段階で,ストレスを反映するような光合成能力の低下は認められなかった。前述の結果と併せると,生育立地選択は更新初期に強く発現すると予想される。 調査区内,および周辺域における菌根性きのこ類の子実体発生状況および樹病の発生状況を,予備的に調査した。河畔域においても菌根性のきのこ及び実生根系への菌糸の付着が確認された。ヤナギ類に乾燥耐性の異なるグループがあることが示唆されたことから,乾燥立地と考えられる火山攪乱地だけでなく,河畔での植生再生に菌根菌が寄与している可能性が考えられ,ともに今後の精査を要する。菌接種試験により,カラマツ実生に菌根形成初期段階が認められ,今後の実験計画に展望を得た。
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