2002 Fiscal Year Annual Research Report
地表変動後の植生回復における根圏相互作用システムに関する研究
Project/Area Number |
12460062
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
矢島 崇 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (90142702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 敏澄 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (00343012)
菊池 俊一 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (10250490)
玉井 裕 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (50281796)
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Keywords | 火山性攪乱地 / 河畔林 / 植生再生 / 根圏 / 先駆性樹種 / 菌根菌 |
Research Abstract |
火山攪乱地の渡島駒ヶ岳,有珠山,河川攪乱地の漁川を中心に調査を行った。河川攪乱地では、ヤナギ類の実生定着段階における菌根の役割を明らかにするための基礎として,普遍的構成種であるオノエヤナギについて,菌根のタイプおよび形成率の季節・年次変化を検討した。また,渡島駒ヶ岳では,火山性攪乱地での菌根菌と窒素固定バクテリアおよびカラマツ実生の3者共生関係について検討した。さらに,噴火後間もない北海道有珠山で,樹木の侵入・定着実態と,それらの根系に形成された菌根のタイプ・形成率を明らかにした。 河畔のオノエヤナギ実生では,優占する2種の外生菌根菌が,季節的に棲み分けていた。すなわち,根端が盛んに分岐生成される春から夏に大きく優占するタイプと,根端の成長が停止した夏〜秋に菌根形成を行うタイプがあった。これらの事実は,1個体に共生する複数の菌根菌が機能的な違いを有していたり,河畔の攪乱体制に対応して生育する菌類が存在する可能性などを示唆しており,今後の課題となった。 噴火後2年目の有珠山ではオノエヤナギ,ドロノキを主体に高木種の侵入が見られたが,個体密度は低かった。6月に確認されたこれらの種の実生は9月まで高い生残率を示した。2種の全実生に外生菌根の形成が認められ,オノエヤナギで2タイプ,ドロノキで1タイプと判断された。根端レベルで見た菌根形成率は,河畔での形成率よりも低かった。内生菌根菌はいずれの種でも確認できなかった。内生菌根依存性のイタヤカエデは6月時点では以上の2種に次ぐ個体数が認められたが,9月には全て消失していた。 駒ヶ岳のカラマツ実生の根系から,6タイプのバクテリアを単離し,性状を検討した結果,4〜6種と見られる単生窒素固定菌が外生菌根菌とともに根の表面に存在することが確かめられた。実生への接種培養試験の結果から,バクテリアだけでも実生の生存に大きく関わっていると考えられ,外生菌根菌を含めた3者共生の可能性が強く示唆された。
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