2002 Fiscal Year Annual Research Report
線虫C.elegansの行動の分子生物学的解析―特にamphid感覚情報の制御について―
Project/Area Number |
12480212
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
桂 勲 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 教授 (00107690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 健 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 助手 (10249948)
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Keywords | 行動 / 変異体 / 線虫C. elegans / 遺伝子発現 / 嗅覚順応 / 感覚情報処理 / dauer幼虫 / 学習 |
Research Abstract |
本研究は、当研究室で分離した線虫C. elegansの変異体を用い、主に分子生物学的手法により、感覚器官amphidで受容される信号の情報処理機構(学習を含む)を解明することを目的とする。本年度は、以下の結果を得た.(a)C. elegansの初代培養細胞中に少数、HEN-1蛋白質(感覚統合や学習を制御する)を結合する細胞があることを発見した。そこで、HEN-1と結合するタンパク質を発現クローニング法によりクローニングする研究を開始した。(b)餌とbutanoneの「連合学習」が異常になった変異体のうち、2株のマッピングを行った。(c)Tyr-ホスファターゼをコードするsdf-9遺伝子の変異体は、P450をコードするdaf-9遺伝子の変異体と同様に、不完全なdauer幼虫になることを見つけた。sdf-9を発現する頭部の1対の細胞ではdaf-9も発現しており、これがXXXL/Rという名の細胞であることを、ある種のモザイク解析で決定した。孵化直後の野生型幼虫でこの細胞を破壊すると不完全なdauer幼虫になることから、XXXL/Rはdaf-9やsdf-9遺伝子の働きを通してステロイドホルモンの代謝に関与していると推測された。(d)dauer幼虫形成制御に関わるsdf-14遺伝子はABCtransporterをコードするが、咽頭、腸、神経で発現する。sdf-14変異体において、咽頭、腸、神経のうち1〜3つでsdf-14遺伝子を強制発現させて、dauer幼虫形成に関する変異表現型がどの程度回復するかを調べたところ、いずれの組織/器官での発現も少しずっ表現型に寄与していることがわかった。(c)、(d)の結果は、dauer幼虫形成制御が神経系でのみ行われるという従来の研究結果を覆すもので、当初の予想に反するが、意外な発見につながる可能性があるので、さらに追求する予定である。
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