2002 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝資源としての稀少動物「口之島野生化牛」の保護と活用に関する研究
Project/Area Number |
12556045
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
西中川 駿 鹿児島大学, 農学部, 教授 (70041639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出口 栄三郎 鹿児島大学, 農学部, 教授 (70155480)
安田 宣紘 鹿児島大学, 農学部, 教授 (30041651)
中西 良孝 鹿児島大学, 農学部, 教授 (30198147)
吉田 光敏 鹿児島大学, 農学部, 教授 (00174954)
前田 芳實 鹿児島大学, 農学部, 教授 (50041661)
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Keywords | 口之島野生化牛 / 生息確認頭数 / 群構成頭数 / 骨長推定式 / 内部寄生虫相 / プリオン遺伝子 / 体外受精 / 日増体量 |
Research Abstract |
稀少動物遺伝資源としての口之島野生化牛(以下、野生化牛)の保護と活用を図るため、生態、形態・解剖、疾病、遺伝・育種、繁殖、産肉能力などの特性を明らかにした。本年度得られた結果は以下のとおりである。 1.2002年度における野生化牛の生息確認頭数は春季26頭、夏季37頭、秋季25頭および冬季2頭であり、重複個体を除いた合計は55頭(成牛38頭、育成牛5頭および子牛12頭)であった。2001〜2002年度に6頭の死亡個体(晒骨を含む)を確認した。生息地内には5つの群れが存在し、1群当たり3〜11頭で構成されていた。 2.野生化牛、黒毛和種および見島牛の頭蓋と四肢骨の幅や径などの計測値から骨長の推定式を、骨長から体高、体長、十字部高の推定式を作成したところ、いずれも0.80以上の高い相関が得られた。また、各骨の計測値から雌雄の判別式を作成したところ、80%以上の判別効率が得られた。さらに、野生化牛の主な筋肉の筋線維は黒毛和種およびホルスタイン種より細くて密度が高いこと、筋線維型の割合はII型線維が多いが、他種との差は認められないことが明らかとなった。 3.現地に生息する野生化牛と同島の放牧牛の血液一般検査、血清生化学検査および血清抗体価検査の結果、野生化牛では、貧血低蛋白血症、赤血球寄生原虫が確認された、一方、主要なウイルス感染症に対する抗体価は放牧牛では陽性であったが、野生化牛では陰性であった。 4.内部寄生虫相の検査と捕獲・飼育中に死亡した3頭の病理学的検査を行った。寄生率には牛群間に差があることが判明した。3頭の死亡原因は,闘争による腹壁破裂・腹膜炎、早産(胎齢275日)による衰弱死、老衰死(20歳以上)であったが、成牛2頭には双口吸虫、膵蛭、消化管内線虫の多数寄生がみられた。 5.野生化牛を含む和牛およびアジア在来牛集団についてプリオン遺伝子の構造解析を行なった結果、アジア在来牛集団と和牛集団とではプリオン遺伝子の多様性の頻度傾向が異なり、野生化牛は4種の和牛およびモンゴル在来牛と同様の頻度傾向を示した。また、これまでの遺伝子分析結果から、野生化牛は黒毛和種集団に近いことがうかがわれる。 6.野生化牛の雌では、発情周期中の卵巣内で卵胞の発育・退行を繰り返す卵胞波がみられた。また、野生化牛の新たな凍結保存精子を活用し、体外受精による受精卵の作出と凍結保存、人工授精による子牛の生産に成功した。 7.黒毛和種慣行肥育方式による野生化牛去勢雄1頭の16〜23ヵ月齢における日増体量は0.51kgであった。
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Research Products
(1 results)